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第二十四話「歪曲」
それは分岐点のはじまりだったのかもしれない。
でも、それに気づく人はいなくて。
だとすれば。
それは単なる通過点だったのかもしれない。
ヨウスケから外出解禁令が下りてからというもの、何かとヒジリ君が私を誘いに来てくれていた。
第六のライダーになるとはいえ、まだ正式にレゾナンスしていない彼は戦闘訓練には参加してないらしい。
I'sの皆がいないときでも、私が一人にならないようにと気を使ってくれていることが分かった。
でも、そうなると私としては心配なのがエピフォンの覚醒に関すること。
アキラさんを誘った夜、襲ってきたライトフライオノートに対抗するため、力を欲したヒジリ君はエピフォンとレゾナンスするはず。
なのに昼夜問わず私に構ってくれているせいか、彼がアキラさんを誘う様子も気配も感じられない。
もし、このままライトフライオノートが襲来したらどうなる?
答えは、分かるはずもなく。
―――――……
「まーた難しい顔してんな」
「!……ヒジリ君……」
「眉間、シワ寄ってんよ?」
消灯時間間近の談話室でぼんやりしていた私に声を掛けてくれたのは、やっぱりヒジリ君で。
もういっそのことエスパーか何かじゃと思わせるほど、最近の彼は私の行動を先読みしてくる。
「……別に、なんでもな……」
「ふーん。ユラは元気有り余っててヨユーなときでも眉間にシワ寄っちゃう可哀想な女のコなワケね」
「ヒジリ君、性格悪い……っ」
「ひっでー。俺はただユラを心配してるだけなんだけど?」
さも当然のように隣に座られ、憎まれ口を叩くと、小さく笑い声が溢れたのが気配で分かった。
それは、いつもとおんなじ。
そう、いつもと。
不意に落ちた影に、顔を上げれば。
信じられないほど近距離に綺麗な瞳があった。
視線がぶつかって。
心音が速まる。
「ひ、じり……くん……?」
「なぁ……ユラ」
うまく呼吸ができなくて。
ただただ、目の前にある瞳を見つめ返した。
「……アンタのせいで、俺は……」
(12/9/10)
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