潮鳴りノクターン





「ユラ。……今夜、どうだ?」



突然爆弾を投下してきたヨウスケに私は箸を持ったまま固まり、タクトは持っていたスプーンを落とした。



「……え、え?なにが?」



意味深な発言に妄想が巻き起こり吹き荒れるけど、いっこ確認しておこう。
ヨウスケとは、ただの友人だ。



「……ちょっと、ここだと言い難いな……」



ならなぜいま言ったし。

という私の心の声をタクトが代弁してくれる。



「ヨウスケ……!人前で言い難いような頼み事をするのになぜ真っ昼間の食堂を選んだんだキミは……?!」

「チッ……仕方ないだろう、いま思い出したんだよ」

「だからと言って……っというかその、君たちはいつからそんな……っ!」

「?……どうしたんだタクト?」

「タクト!ヨウスケと私、友人!友人枠越えてない!」




何か可笑しな誤解が生まれかけていることを察知し、否定しようとしたらなぜか片言になってしまった。

そのせいか知らないが、疑いの眼差しを向けられてしまう。



「ヨウスケ!男なら頼み事くらい堂々と頼んだらどうなの?!」



焦りのあまり半ばキレ気味にヨウスケに向き直れば、彼はいつもの調子で「確かにそうだな」と頷いた。
大丈夫なのか。

というかほんとに何なんだ。



「……こないだユラに手も足も出ず惨敗したぷよ○よ、ヒロが貸してくれたんだ」

「……………は?」

「だから今日の夜、俺の部屋でやらないか?」





記憶を辿れば、確かに。
一週間程前にヒロの部屋で大盛り上がりしたような気がする。





しかし。
おまえ。



「なんでわざわざ意味深な言い方した……?」



完全に冷たい視線の私の隣で、ワナワナと震えるタクト。
仕舞いには椅子から立ち上がる始末。

私、もうどっか行っていいかな。



「ヨウスケ……!君は明日が演習だと分かってそんな……っゲーム、だと……?!」

「だからタクトの前で言いたくなかったんだ……」

「……あ、そういうこと」



すっかり脱力する私に、ヨウスケがすごいイイ笑顔を向けてきた。





「今夜は寝かせないから覚悟しておけよ」





どや顔で言ってんじゃねーよ。







リュウキュウは、今日も平和だ。










(12/9/6)


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