『遅めのregret』
よく、可もなく不可もなく、とか。
どこにでもいる普通の、とか。
ごくありふれた、とか。
言われるけど。
それは何を基準にしているのだろう。
「ユラ。夏祭りに行くぞ!」
「は、い?」
新緑の季節も終わりかけ、日差しが夏のそれに変わり始める頃。
真壁君は私を名前で呼ぶようになった。
それこそなんの前触れもなく。
「……夏祭りって、もう、そんな時期なんですか?」
「……。お前はもう少し世間を見聞した方がいいぞ」
「それ、真壁君には言われたくなかったです……」
「なっ……!」
確実に、真壁君との距離が、近づいている気がする。
でも、彼が近くなればなるほど、私の中で絶対的な線引きが生まれていた。
「フッ、俺がユラに見合う浴衣をchoiceしてやるからな」
「……あ、その、夏祭りなんですが……」
「どうした?」
「私ではなく、その……南先生を誘ってみてはどうでしょうか……」
そう、告げたとき。
真壁君の表情が一瞬曇って見えた。
「……What?……どうしてそこで、担任が出てくる?」
「いえ、別に、これといって意図があったワケじゃないんです……けど……」
ただ、やっぱりこの世界を、どうしても傍観的に捉えてしまう自分がいて。
それは日を増す毎に、強く色濃くなってきていた。
彼らと関わることを、嬉しく感じる一方、自分という存在の違和感を拭えないでいたんだ。
咄嗟に出た言葉は、彼にどう届いたのだろう。
「俺はお前を誘いたかったから、誘ったんだ」
苦い表情で呟いた真壁君に、私は答を返すことが出来なかった。
(12/9/4)
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