月の下、君の隣。
トラの右目はきれいな月の色だね。
そう言えば、彼は照れたように「ばーか」と笑った。
「特別課題?」
「おー……なんかよくわかんねぇけど、加賀ってやつが突然始めやがってよ」
「まさかトラ、参加してんの?」
「ンなわけねーだろ」
二人でゲームに勤しんでたら、不意にトラが課題がどうこう言い出して焦った。
不良代表みたいなトラに限って、課題に参加してるとか、そんな。
冗談でも笑えない。
「でも、確かに……変な話ね。こんな微妙な時期に課題とか」
もう小学六年の秋だというのに。
TVの画面を見たままに呟けば、トラも同じように返事を返してくる。
「…まーな。つか、その集められたメンツ自体どーもこーも可笑しくてよ」
「課題のメンバー?」
「おぅ。まともに会話できんのは二人くらいだ」
「……えぇぇ?トラのとこ、お金持ち学校でしょうが。それなりの品格とか常識はある人ばっかじゃないの」
驚く私に、彼は笑った。
「品格とか常識とか、当てはまらねぇ奴らばっかだな」
「……っ」
トラは、こんな風に笑う人だったろうか。
妙な違和感を感じて、私は少し眉を寄せた。
「……ま、どっちみち参加することはねぇけど」
ふっ、といつもの様に。
影のある表情へと戻るトラ。
そのことに安心感を抱いている自分に、私は思わず笑った。
「なんだよ?」と不自然そうに首を傾げる彼に、笑顔を向ける。
貴方のその綺麗な瞳が、私だけを映せばいい。
だから、トラ。
いつまでも、ヒトリでいてね。
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あれ?ヤンデレ?
(12/9/3)
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