流された先にある想いは
「クラゲだー!ほら見てヒジリ君クラゲだよー!!」
「ちょ、俺がクラゲみたいな言い方やめね?」
「打ち上げられたのかなー、このコ」
「スルーかよ」
折角、時間を見つけてユラと海辺デートにこぎ着けたのに。
コイツときたら、俺よりクラゲに興味津々ってどーゆーことだコラ。
「あんま近寄ると刺されっぞ」
「もうそんな体力なさそうだよ」
「わかんねーよ?最後の力振り絞って……ユラの白い肌に吸い付いて、痕を残してやろうとか企んでるかもしんないぜ……?」
「何か表現がムダに卑猥に聞こえるんだけど……つか吐息混じりに言うなし」
やっと視線が俺を捉えたから、そのまま手首を掴んで此方へと引き寄せる。
細っせぇ身体。
コイツはなんで、こんなにも脆い存在なのに、こんなにも強く在るんだろうか。
俺には、理解できねーよ。
「ユラ」
「ん?」
「……、いや、なんでもねぇわ」
「えー?なにそれ」
ただ、その笑顔が喪われないように出来ることがあれば。
俺は神に祈ったり、望んだりなんかしねぇ。
いつか、無くなっていくものを求めるのは、酷く辛いものだと……。
たぶんお前も俺も知ってるから。
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今より時間軸すこし先。
(12/8/29)
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