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第二十二話「保護」
「あの、ちょっと、浜辺に……」
「ダメだ。潮風が怪我に障る」
「……、すぐ戻ってくるから」
「ダメだ。ユラのことだからそのままフラフラするに決まってる」
「……っ、タクトぉぉぉ……!ヨウスケがぁぁぁ……!」
部屋のドアの前に立ち塞がるヨウスケに痺れを切らして、通り掛かったタクトに泣きついたら「今回はヨウスケに味方させてもらう」と切り捨てられた。
私に味方はいないのか。
学園祭から早半月。
完全に大した怪我じゃないと甘くみていた私は、痛み止の切れた翌朝から信じられないくらいの頭痛に襲われた。
一週間は医務室のお世話になり、せっかくお見舞いに来てくれていたI'sの皆ともロクに話せないような状態だった。
そして二週目に入って漸く自室に帰って来れたのだけど……。
「……なんでヨウスケに行動規制されてるの私……」
「俺だけじゃないぞ。I's総出で時間をずらして見張ってる」
「はぁぁ!?」
「昨日の夕方はタクトだったな」
「えぇぇぇ……?!」
まじか。
監視下か。
「私、もう大丈夫だよ?」
「ユラ、俺は……俺のいないところでユラが無茶をして、怪我をするのが嫌なんだ」
「……うん……それは、わかってる」
「いや、分かってない」
「え……、?」
決して強くはない力で引き寄せられて、ヨウスケに抱き締められる。
「……戦いが終わって、ユラが怪我してるのを知ったとき……っ、心臓が、止まるかと思った……」
「……っ」
「……俺は、ユラを守りたい。お前の全てを、守り抜きたいんだ」
「……ヨウスケ……」
触れる肌から伝わる、呼吸とか、心音とか。
ヨウスケの全部が、私にまっすぐに向けられているのを感じて。
私は、上手く息が出来なくなった。
ヨウスケに触れられる度に、今まで進んできた道筋が一気に揺らぐんだ。
(12/8/26)
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