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第二十話「哀歌」
目を醒ましたら、医務室の真っ白いカーテンがいちばんに目に入った。
遠くから聴こえてくる音楽が優しく私の耳に届く。
「……」
また、ひとつ、終わった。
物語は、これから否応なく佳境へと堕ちていく。
次はなにが起こるんだった?
エピフォンの覚醒?
ハコダテ演習?
トーキョーの悲劇?
「……ぅ、う……っ」
許容を超えた何かが、堰を切ったように。
意図せず涙が溢れおちた。
私に出来るのは、物語を変えることじゃない。
ただ、本来あるべき軸を見届けるだけ。
それがこんなにも痛みを伴うものだなんて。
知らなかった。
知りたくもなかった。
せめて、可能ならばタクトに青の世界へ還って来て欲しいから。
アキラさんにはタクトを選んで欲しいんだ。
なのに。
私は。
「……ユラ!気がついたのか?!怪我は……っ」
「……タ、クト……」
「……っ、ユラ?」
溢れ出す感情を、自覚する勇気なんてない。
(12/8/19)
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