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第十七話「不安」
「で?ユラは何をそんなに心配してるワケ?」
「……え、」
あのあと、ヒジリ君と一緒に人の少ないフロアに移動していた。
のんびり歩きながら掛けられた言葉に、思わず首を傾げる。
猫のような切れ長の瞳が、真っ直ぐに此方を見据えている。
「……あ、の……」
無意識に言葉に詰まった私を見て、ヒジリ君の眼光が少し弛んだ。
「別にムリに話せとは言わねーよ?つかあんま重い話されてもぶっちゃけ俺も受け止めきれる自信とかないし」
ああ、私が話さなければと気負わないように、気遣ってくれているんだ。
彼は本当に優しいひと。
そして私は、すぐに弱さを曝け出してしまう。
「……、もし、ね」
「え?」
「……ヒジリ君はもし、大切な何かを自分の選択肢一つで失うかもしれないとしたら、どうする……?」
気がつけば、口をついて出た問いかけ。
ほんとはね。
その問いかけをするという選択肢が正しいかどうかすら、分からなくて。
不安でしょうがないのです。
(12/8/17)
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