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第十六話「喫茶」




「そこのカーノジョ。俺とこの店でお茶しねぇ?」

「……何やってんの、ヒジリ君……」



学園祭当日、特にやることもなくてブラついてたら聞き覚えのある声に呼び止められた。

振り返った先にはいい笑顔の彼と、こっちも見覚えのある凶悪な外観の喫茶店。



「うわ……」



呆然と立ち竦む私に笑顔のまま近づいてくるヒジリ君。
何故かその表情がいつもより胡散臭い気がするのは気のせいだろうか。



「ユラ。折角通り掛かったんだし、寄ってけば」

「え、いや……私、別に喉渇いてないから……」

「まぁまぁ、そう言うなって。ほら、俺がエスコートしてやんよ」

「ちょっと……!」



肩を抱かれて半ば強引に連行される。

これエスコートとか紳士的なものじゃないよね。
強制送還される囚人みたいなんだけど……!

店の前にいたデュセンにまで喜ばれてしまえば、もう逃げ場はなかった。

席に着くと、奥から赤い体躯の彼が現れる。
その手には、例の、コーヒー。



「ユラっ!俺のコーヒー飲みに来たんだってな!」

「フェル……頼んだのはヒジリ君だよ」


「俺はさっきフツーのコーヒー飲んできたから」

「……ヒジリ君、覚えときなさいよ……」



フルボッコな気分とか味わいたくないこと極まりないのに。
フェルの期待に満ちた眼差しに、私は覚悟を決めて、凶悪カラーのコーヒーを一気に飲み干したのだった。










(12/8/17)

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