『Hurryその原因』
「実は……、好きなんです」
「……へっ?」
「にゃんこが!」
そんなオチだとはわかってたけどさ。
ちょっとくらい動揺しても仕方ないだろ、コレは。
夕日の沈みかけた体育館裏で、向き合う楢川と俺。
……の間にいる、タマ。
「癒されます……」
すごい弛んだ表情でタマの傍に寄り添ってっから、何となく面白くない。
全然こっち、見ねぇし。
「楢川」
「はい」
「……あ、いや……その、こないだ、翼と……飯行ったって聞いたんだけど……っ」
無意識に名前を呼んで。
咄嗟に話題を探したら、こないだ翼に自慢のように話された内容がでてきてしまった。
一瞬キョトンとしたあと。
楢川は柔らかく微笑む。
「先日、バイトがお休みの日に誘って頂いて……。真壁君がファミレスに行ってみたいと言われて」
「翼が?ファミレスに??」
「はい、だからご一緒させて頂いたんです」
「……そっか」
何でかよく分かんねーけど、やっぱり、胸んとこがモヤモヤする。
楢川は笑ってんのに、なんで。
「真壁君は、すごく真っ直ぐな方ですね」
「……、っ」
なんで。
っていう疑問は、彼女のその一言ですぐに答えがでた。
楢川の笑顔が、俺に向けたものじゃないからだ。
それが信じられないくらい、面白くないって感じてる俺がいる。
だけど、だからといってどうしていいかなんて分かんなくて、俺はただ彼女を見つめるばかりだった。
(12/8/16)
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