FOR YOU!!〜前編〜
「黒河。クリスマスプレゼントは俺様だ」
―――――。
朝、昇降口で珍しい人物と遭遇したと思ったら。衝撃的な発言をされてしまった。
「…クリスマスプレゼント…って言われてもさぁ…」
頭を過ったのは、三つの選択肢。
一、とりあえずお礼。
二、ツッコむ。
三、完全にスルー。
「どう思う?」
「…て、言われてもなぁ…」
リアクション薄いよ、忍足。
そう言ったら少し泣きそうな顔をされた。
「まじ意味わかんないわ…」
冒頭の「プレゼントは俺様」発言は、今朝、隣のクラスの跡部に言われたものだ。
そう。“只の顔見知り”の跡部から。
別に特別仲が良いわけでもなければ、私はファンクラブの人間でもないし。本人をプレゼントされる謂れがないのが正直なトコロだ。
まぁ余りにその言葉のインパクトが強すぎて、前後の会話の内容をよく覚えていないのだけれど。
とりあえず朝の挨拶をして、その場を足早に離れたのは覚えている。
「そういえば、クリスマスなんだよね…明日」
「それ今更なんとちゃうか、自分」
「だって、あんまり関係ないもん、私」
正直クリスマスなんて、彼氏もいない私にとってはそんな盛り上がり要素のないイベントだ。
町のイルミネーションとか、クリスマス特番とかは嫌いじゃないけど。
「忍足は?なんか予定………やっぱなんでもない」
「え?黒河、何でいま途中で聞くのやめたん??」
「いや、忍足のクリスマスの予定聞いても………ねぇ?」
軽く失礼な発言に「なんてコト言うねん!もっと絡んできてぇな!」とつっこまれたけど、そこはスルーしとく。
「…、跡部は…」
「…なんや?」
「……。なんでもない」
…跡部はクリスマス、どうするのかな。
言いかけた言葉を飲み込む。
忍足に聞くようなコトじゃないと思ったから。
それに、知ったところで、やっぱり私には関係ないと思ったから。
跡部と私じゃ、立ってる場所が違いすぎる。
最初から並ぶ気なんてないけど。
きっと朝の“あの”発言は、彼の気まぐれだろうと自分に言い聞かせ、私は五限目の準備に取りかかった。
――――――――――
去年の冬に書いたものを改編。
(10/12/25)
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