青の行方3


「…ここにいると、時間を忘れそう……」

「…そうだね…、でもそろそろ戻らないと」


「うん……」


ずっと青の世界を見ていたくて、幸村と二人の時間があまりに愛しくて。

私はしばらく立ち上がれずにいた。

不意に、手を差し伸べられる。

隣を見上げると変わらず微笑む幸村。


「また連れてきてあげるよ」


合宿の日程はまだ残っているから。


そう告げた彼の手を取りながら、私は小さく頷いた。






なんとなく、繋いだ手はそのままに、私たちはロッジへと歩いていた。


「……夏が、始まるね」


薄闇の中で、手から伝わる体温が、幸村の存在を教えてくれる。

光源は、木々の隙間から差し込む月明かりだけだ。


「…怖いかい?」


不意に問いかけられる。


「……、今はもう、怖くないよ」


全国大会は、幸村や私達三年にとって、部活の終わりを意味する大会であることに相違ない。

クラスの違う部員なんかとは、極端に会う機会も減るだろう。

それは私にとって大きな喪失感に繋がるもので、終わりが来なければいいと何度も思った。
あの心地好い場所を失うのが怖かった。


だけど。


「皆が、大会に向けて…どれだけの努力を重ねてきたか、知ってるから」


幸村を見れば、彼も此方を見つめてくれていた。


自然と、笑みが溢れる。


「……今はもう、ただ皆の為に頑張るだけだよ」


薄暗がりでも、幸村が微笑んだのが分かった。


「それでこそ、俺たちの信頼するマネージャーだ」



頼りにしているよ。






繋がった掌に、僅かに力が籠った。






貴方と過ごす一つ一つの時間を、私は決して忘れないよ。








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やっとオワタ(*´∇`*)
(11/10/09)

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