uch!
「赤也?」
「……すんませんでした!!」
別にいいよ。
連絡もなしに2時間待たされて、笑顔でそんな事言える程、大人じゃない。
「言い訳は聞きません。今日で私たちの関係も終わりです。さようなら今までありがとう」
「ちょ、沙紀先輩!待ってくださいよぉ!!」
「駅前で大声で名前呼ぶな恥ずかしい!」
いや私も大概だけどさ。
第一、これが初めての遅刻なら「もぉ〜赤也のおバカさん」とか笑ってネタにしたかもしれないが。
「赤也……アンタ、コレで記念すべき30回目の遅刻だからね。33回のデート中30回遅刻とかどんだけやる気ないのアンタは!!」
「いやっ、やる気は満々なんスけど……っ、先輩意外とガードが堅いというか……」
「誰がそっちの話してんのよ!潰すわよ!!」
「ひぃぃっ……!」
ほんと、何で私達はこうなんだろう。
付き合い始めた頃から何も変わらない。
いつまで経っても呼び捨てにしてくれないし、手を繋いだのも私からだし、家に呼んだら断られるし(変な含みはないってのに!)……。
いやまじで正直やる気あんのか!
「…………って何?なに急に無言でこっち見てんのよ」
「いや……先輩、そんな風に思ってたんスね……」
「は?」
突然、真剣な表情で私の手を握ってくる赤也に若干引きながらも「何が?」と尋ね返す。
「俺……先輩に……、沙紀に嫌われたくなくて、なかなか自分から動けずにいたんです」
「あ……」
真ん丸のグリーンアイが此方を見つめる。
「デートの前日は緊張しすぎて毎回眠れなくて……挙句、毎回遅刻しちまうし……」
…………。
遠足前日の小学生か。
心の中だけでつっこんで、私も赤也を見つめ返す。
不意に、彼との距離が不自然に縮まった。
気がつけば。
吸い込まれそうなくらい近くに、赤也の瞳があって。
手と腰を引き寄せられたことに気づく。
「あ、かや……っ?」
色白の癖に男らしい無骨な指が、私の指に絡む。
「俺…っ、これからもっと沙紀に近づきたい……!」
次の瞬間。
赤也の唇が、私のそれに重なった。
バコォォォッ!!!
「ぐふぉっ」
一瞬の間も置かず、私の鞄が赤也の顔面にクリティカルヒットする。
「え、えっええ駅前でなんてことしてんの!!このバカ也ぁぁぁッ!!!」
その場から逃走した私だけど、ちょっぴり嬉しかったなんて……恥ずかしいから絶対に言えません!
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心の声だだ漏れヒロイン。いろんな意味でイタイ話。
(11/10/06)
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