reep...
「黒河。おまえさん、赤也のことが好きなんか」
「…………仁王、それ何ボケ?」
仁王と私はよく言うサボり仲間。
お互いのコトには深く干渉しないのが暗黙のルール。
……だと思っていたのは私だけだったのかしら。
「いや、至ってマジメに聞いとるんじゃけど」
「ではマジメに答えてあげましょう?……赤也はただの幼馴染みよ」
「……初耳じゃのぅ」
「当たり前。誰にも言ってないもの」
赤也も学校では人気者だから。
いくら学年が違くても、適度な距離を置いておくに超したことはない。
最低限の防衛策だ。
「俺に言ってよかったんか?」
「仁王はいちいち余計なコト言って振らかすほど愚かじゃないって知ってるから」
そう言って屋上の床に寝転ぶ。
すぐ横で、今まで横になっていた仁王が、上体を起こす気配がした。
「こんなんでも、結構信頼してるし」
瞳を閉じても、瞼をすり抜けるように暖かい日差しが透けて見える。
白い視界を感じながら、私は仁王に言葉を放った。
「俺は、沙紀が思っとるより、ずっと愚かじゃ」
不意に、視界が黒に覆われる。
さっきまで隣にあった温度が、突然上へと移動したことに、驚いて目を開けた。
「……いやいや……仁王?何してんの」
開いた瞳の先には、銀色。
陽光を受けてキラキラと輝く。
「……もうちょっと焦るとかないんか。……リアクションの薄いヤツ」
私に覆い被さるように此方を見下ろす仁王は、面白くなさそうに眉を潜める。
これでも十分驚いてるんだけど、彼には伝わらなかったようだ。
「黒河……」
「は?ちょっ、ゃ……ははっ!擽った、い、って!」
肩口に埋もれた銀色がゆらゆらと首筋を這って、思わず身動ぐ。
すると一瞬の内に、彼はひょいと立ち上がり私と距離を取った。
「もー、じゃれるならもっとラフにじゃれてよ……体力ないんだから私」
半ば息切れ気味の私を、仁王がここ一番の笑顔で見下ろす。
何なんだいきなり。
「黒河の鈍女」
「はぁぁっ?」
まさかの侮辱に固まっている間に、彼はさっさと屋上から去っていった。
教室に戻った私が、首筋の赤い痣を友人に指摘されて絶叫するまで、あと10分。
――――――――――
仁王の片想い。
(11/10/05)
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