ridescent...


虹が出たら。

君に伝えに行くよ。








僕の幼馴染みは昔から体が丈夫ではなくて、会いに行く度、小さな窓から外を眺めていた。

彼女は空の景色が移り変わるのが一等好きで。
庭の植物たちとのコントラストを見比べては、季節の変化を誰よりも楽しんでいたように思う。





「沙紀」

「周助君、いらっしゃい。今日は庭の方から来たの?」

「うん。はい、これお土産」

「わぁ…綺麗な花!……いつもありがとう」



窓の外から名前を呼べば、嬉しそうに顔を覗かせる彼女が愛しくて。
幼かった僕は、どうにか沙紀に喜んで貰いたくてよくそうやって花を贈った。



「沙紀は何が好き?」



そう尋ねると、決まってはにかんだ笑顔を見せてくれた。



「……虹がすき。儚いけど、私に沢山の色を魅せてくれるから」



それを聞いてからは、虹が出る度に君の元へと走ったね。





部屋の窓から空を見上げる君の笑顔を、忘れることなんてこの先もきっとないと思う。





ある初夏の日。

手術を受けることに決めたと、僕に伝えてくれたとき。
君は一体どんな気持ちだったのかな。

何も言えなかった僕に、



「虹が出たら、今度は一緒に外で見上げようね」



そう優しく微笑んでくれた。

僕たちは叶うかも分からない約束を交わしたんだ。



「虹が出たら………」





必ず、伝えに行くよ。



君の元へと、走るよ。








――――――――――
8歳位をイメージして頂ければ……
(11/10/04)


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