adiante...
「今日も可愛いね」
「……。あざっす」
最早日常会話の一部になっているのはどうかと思うのだけど。
クラスメート(そうあくまでもただのクラスメート)の佐伯君は、いつも通り爽やかだ。
「あ、黒河さんがあんまり可愛いから挨拶も忘れていたよ。…おはよう、黒河さん」
「……。おはよ」
最早日課か。
そうツッコミたくなるほど、彼の台詞は至って自然だ。
いちいち反応していた頃が懐かしい。
あの頃は初だったな、私も。
「……てかさ、前から聞こうか迷ってたんだけど」
「ん?なんだい?」
ああ。
笑顔がムダに爽やかだなコノヤロー。
「佐伯君て誰にでも“そう”なの?」
私の言葉に、一瞬キョトンとした彼だったけど、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「……女の子は平等に可愛いと思うけど…黒河さんは、俺の特別だよ」
「……〜っ」
聞くんじゃなかった。
綺麗な笑顔でとんでもない爆弾落としやがりました佐伯君は「予鈴鳴ったね、じゃあまた後で」と爽やかに去っていった。
というかどんだけムダに爽やかなんだ。
そんなところも良いと思ってしまう私は、結構末期かもしれない。
気がつけば。
君の仕掛けた罠のなか。
(11/10/04)
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