桜色の雫





飾らない貴方が。
何よりも綺麗。





「春だねぇ…」


線路沿いを歩きながら、思わず呟く。

見上げれば、薄紅の花弁が満開。


「フフ…、急にどうしたんだい?」


隣を見れば、桜が似合いすぎてる幸村。


「…いやぁ…綺麗だなー、って」

「…そうだね」


桜も、貴方も。

どこか儚いのに、強くて。

私にはあまりにも、目映い。


「………」

「……」



「…あの、さ」


無意識に立ち止まっていた私は、同じように少しだけ先で佇む幸村に声をかけた。

濃紺の柔らかな髪が、ふわりと揺れる。


「…幸村は、」


言葉が、巧く紡げない。

舞い散る花びらの中で優しく微笑む彼が、泣きたくなるほどの衝動を生むから。


「……なんでもない」


上手に伝えられなくて、結局俯いてしまう。


「…思わせ振りだなぁ」


困ったように首を傾げる幸村を見つめ、視線で想いが伝わるといいと思った。


「…あ、…」

「え、…なに?」


唐突にこちらへと戻ってくる彼に、なんとなく身構えてしまう。
別に、疚しいことなんてないのに。

不意に伸ばされた白い指が、私の髪を掠めた。


「……っ」

「…フフッ。ほら、花びら」


差し出された淡い桜色のそれは、再び宙を舞う。
無意識に目で追いながら、私は口を開いた。


「……ね、幸村」

「ん?」



「来年も…、一緒にこの桜を見たいな……」


幸村が少しだけ驚いたのが分かった。

だけど、すぐにその表情は笑顔に変わる。


「ああ。来年も、きっと一緒に見よう」



約束。



そう言って、微笑む彼が霞んで見えたのは、きっと舞い散る花弁たちのせい。

込み上げる滴を、私は笑顔で消した。








――――――――――
約束できること。貴方の隣にたっていることが嬉しい。…退院後初の桜の季節設定。細かい…そして名前変換ない…
(11/04/24)

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