100%彼氏



愛されるよりも愛したい。

女は愛された方が幸せになれる。


さて、貴女はどちらに共感?





つい先日。

この氷帝で知る人ぞ知る、跡部景吾君に告白された。


「黒河沙紀。俺の女になれ」


そのあまりの簡潔さに驚いて、思わず頷いてしまった私もどうかと思うが。

しかし、付き合い始めて三日。
彼は私にとても良くしてくれる。
それはもう、若干引くくらい。




『沙紀』

「……。あー…あとべ君?…おはよう…?え、…なに、何かよう?」

『ククッ、寝惚けてんなよ。…15分後に迎えに行く。支度して待ってろ』

「……!!」


初日の朝。
教えた覚えのないケータイに、着信があった。

ちなみに私は帰宅部だ。
テニス部の跡部君とは起床時間が違いすぎる。


何とか15分で支度を済ませた私の元に現れたのは、黒塗りの高級車。

躊躇いつつ乗り込んだら、不意打ちで、頬にキスをされた。


「……はっ?ぇ、えぇぇえぇ!?」

「おはよう、沙紀」

「あ、おはよ……っていやいやいやいや!」

「なんだ?今日は朝からテンション高いな」


まさかのアクションに動揺する私を後目に、優しく微笑みながら頭を撫でてくる彼。


朝はだいたいこんな感じ。


お昼は当たり前のように食堂に連行され、氷帝名物、コースランチを御馳走される。


「もっと食べろ、おまえは痩せすぎだ」

「いや…眼科に行った方がいいよ跡部君……」

「は?…俺は専属の眼科医が定期検診に来てるぜ?」

「……。うん、これ美味しいなぁ」


周囲の視線を掻い潜り、跡部君との微妙なズレのある会話を繰り広げながら食事を進める。

時々顔を上げると、綺麗な瞳と必ず出会う。
普段から、彼は飽きもせず私を見ているんだ。



放課後、テニスコートに連れられて、片隅のベンチで見学する。

優雅な動きでコートを駆け巡る姿は単純にカッコイイと思う。


あの衝撃の告白から三日経つけど、跡部君は私のドコが気に入ったのだろうか?


漠然と、そんな疑問が浮かんだ。



部活を終えた彼を出迎え、初めて私から「今日は歩いて帰らない?」と提案してみた。

少しだけ驚いた顔をしていたけど、跡部君はすぐに笑顔で頷いてくれた。



只の自意識過剰かもしれない。
だけど、仕草とか態度とか、一つ一つの言葉とか。
色んなものから彼の「好き」が伝わってきて、私の心は時間を重ねる毎に、嬉しさと申し訳なさでいっぱいになる。


「沙紀は、」


「……え?」


隣を歩く跡部君は、本当に別の世界の人みたいに輝いて見えて。


「俺が、好きか?」


「…っ、……」


なのに不意に立ち止まった彼の意識の全てが、私へと向かってきて。


あぁ、私は彼に愛されていると確信出来た。



始まりは100と0だったけど、確実に、私の0は日に日に増えていくから。


0が100になるまで、もう少しだけ待っていてね。








――――――――――
相手100、自分0からスタートのパターン。ちなみに私はこんなプラス思考にはなれん(笑)
(11/07/27)

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