雨色ドロップ



「はぁぁ……」

「…ンだよ黒河、その深い溜め息」

「……はぁぁぁ…」

「ちょ、やめろって!こっちまで鬱い気分になんだろぃ!」


これが鬱気分にならずにいられようか。


これでも私、いま、人生初の挑戦を前にして緊張しまくってるんだっつーの。


挑戦=告白。


そして相手はあろうことか、クラス及び全校女子からの人気を誇る(自称)天才的男子…丸井ブン太。

いや、最初は流石にないわー。とか思ってたのに、日を増す毎に奴が気になって気になって仕方なくて。

これもういっそ早く告ってフラれて次の恋に進んだ方がよくね?
…的な結論を導き出した私は、それからちょうど一週間後の今日、ミッションを決行することにしたのである。

丸井と日直の被る、この日を狙って。




「おまえ、朝からなんか変じゃね?」

「ブッ」


アンタ…今から告ろうかっていう女子になんてこと言うんだ。

泣くぞ、終いには。

覗き込んでくる丸井に恨めしげな視線を送るけど、あっさり無視された。


「つか雨すげーなぁ…」


窓の外は曇天。


そう、私の気持ちを落ち込ませてる要因はもうひとつある。それが、この天気。


人が珍しく女のコらしいことしようって日に、なにこの土砂降り。

なにこのどんよりとした曇り空。


これだけで、私の日頃の行いがどれほど悪いか露見しているようなものだ。


けど、女黒河沙紀。
こんなことで告白を中止したりはしない。

私なりに、覚悟決めてきたんだから。



改めて決意を固めた私は、グッと顔を上げた。





「っぎゃぁぁあ!!!」





がコンマで反らした。


「黒河〜、「ぎゃあ」はないだろぃ…さすがのオレも傷つくっつーの」


呆れたように頬を掻く丸井は、いつの間にかかなり私寄りに座っていて。

大好きなグリーンアップルの香りが、すぐ傍で掠めた。


恥ずかしさに耐えきれず顔を反らしまくる私からは、先程までの勢いは完全に失われていた。


すると、丸井が後ろで溜め息をついたのがわかる。

体が、ビクリと反応した。



告白する前に、呆れられて、嫌われてしまっただろうか。



怖くて振り向けずにいる私の肩に、そっと手が掛けられ、ゆっくりと向きを変えられた。

もう、逃げ場はない。


「黒河……」



「丸井が好きなの!!」





「……………は?」


何か言おうとした丸井を遮って、勢い任せで口にしたのは、陳腐な言葉だった。

固まってしまった彼を前に、ついには涙が出そうになる。


ダメだ。

ここで泣いたら負けだ。


「うわぁぁ…っまじかよ…!」

「…っ?」


だけど、突然頭を抱え出した丸井に、思わず泣きそうなのも忘れてポカンとなる。


「……女のコに先越されるとか…オレ超だせぇ…っ」



「……………は?」


今度は、私が固まる番だ。


「…黒河っ!先に言われちまったけど、ほんとはオレも今日、おまえに告るつもりだったんだからな!!」


「……ぇ、えぇぇぇっ?」


「好きだ!黒河!!」



結局彼の口から出たのも、私に負けず劣らず陳腐な言葉だったけど。



私にとっては最高の殺し文句だよ!








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書いてる途中ちょう眠かったです。(←
(11/07/01)

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