雨の憂鬱



「さいあく……」


靴は水を含んでグシャグシャだし、朝セットしてきた髪は湿気のせいで萎れちゃってるし、黒のハイソは通りすがりのクソバイクに水跳ねされて泥着いちゃったし。

ほんと朝から、最悪だ。


「雨の日なんて消えてなくなればいいのに」


ボソッと呟いて、顔に貼り付く濡れた髪を払う。

つか傘さしてんのに頭まで濡れるってどんだけよ。


やっと校門が見えてきて気を抜いてたら、隣を相合い傘のカップルがキャッキャッとはしゃぎながら通り過ぎていった。

まじない。
リア充爆発しろ。

こないだ友人から聞いた言葉が頭を過る。


ほんと、私が何したって言うわけ?



苛々したまま傘立てに傘を投げ入れると、耳慣れた笑い声が後ろから聞こえた。


「ははっ、こえーよ黒河」

「……人の不幸を笑うな切原」


クラスメートの切原赤也が此方を見て笑っている。
普段なら気にならないその笑みも、今は私をイラつかせる要因にしかならない。


「つーかおまえ、まじ濡れすぎだし。傘に穴でも空いてたんじゃね?」

「なわけねーだろ」


冷たくつっこむ私に切原はもう一度笑って、ただでさえ近い距離を更に詰めてきた。


「……な、なに?」


いくら友人とはいえ、この距離は近すぎる。
見上げれば、すぐ目前に整った顔。

そうだった。

コイツ黙ってればイケメンだった。


不覚にも油断していた私は、赤くなる顔を見られまいと思いっきり視線を落とした。

その瞬間。


「っわふぁ…!」


頭からタオルらしきものを被せられ、変な声が出てしまう。


「ちょっと!なにす……」



「それ、貸してやっから。頭拭いとけ」



「………っ!」


いつもの表情。
いつもの声音。

何一つ変わらないはずなのに。

なぜだかそのときの私には、朝からの不幸を忘れさせるほど、切原がキラキラと輝いて見えたのだ。


ほんと、信じられないけど。



どうやら私は。
彼に恋をしたらしい。



それに気づけたのは、雨のおかげ?








――――――――――
友人のリア充爆発…発言に爆笑した私です。可愛い顔して爆発とか…(笑)
(11/07/01)

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