不純な純情




「最近、真剣に思うの」

「あん?…何が?」

「なぜあたしに彼氏が出来ないのか」

「………。おま、この30分、んなどーでもいい事考えてたのかよ」

「切原。ブッ殺」

「はぁぁっ?!!」


向かい合う二つの席。
しかし向かい合う二人の雰囲気は最悪だった。

……主に女子のせいで。


「…だいたいさ、何であたしがアンタの英語の補習課題に付き合わないといけないワケ?」

「…いや、黒河…超イイ笑顔で了承してただろ」

「そんなの教師の手前だからに決まってんでしょ」


溜め息混じりに告げる彼女に男子の表情が固まる。


「……おまえってまじ二重人格な」

「切原。人は誰しも多面性を持っているものよ」

「……」


真剣に言われ、二の句が告げない赤也。
そんな彼を後目に、沙紀は続ける。


「で、なんでだと思う?」

「…は?」

「冒頭の問題」

「…あー…彼氏云々の?」


「そう」と頷く彼女はあくまでも真面目な様子。
ハッキリ「性格じゃね?」と言える程の勇気は赤也にはない。

というか、顔も悪くないし、思い至る節がそこしかないのだ。


「……いや、俺は、まぁ…悪くねぇと思う、けど……」



「は?なにが」


その有無を言わせぬ物言いとか。

正直彼女に好意を抱いている赤也としては、彼氏なんて出来てもらっては困るのだが。

この口の悪さだと、しばらくは心配なさそうだと確信する。


「ところでさ。なんで切原も、珍しく真面目に補習なんか取り組もうと思ったの?」

「えっ?」

「え?じゃないわよ。いつもブッチしてんの知ってんだからね」


まさか「黒河が補習を手伝ってくれるから」なんて言えるわけもなく。
言い淀む赤也に、沙紀はあからさまに顔をしかめた。


「アンタね、そこは嘘でも…「君が手伝ってくれるからだよ」くらい言って見せなさいよ」

「…っ」


言いたかった言葉を、本人の口から言われてしまい、思わず固まる。
そんな彼に気づいているのか、沙紀は少しだけ前に身を乗り出した。


「てかさ、ほんとにあたしが教師に言われたからって誰彼構わず補習を手伝うと思ってんの?」



「……は?」


畳み掛ける様に言葉を重ねていく彼女に、赤也の頭はついていかない。


「アンタだから、補習を手伝ってあげてるとか考えもしないの?」

「あ、いや、…え??」


完全にショートしている彼を見つめ、沙紀は悪戯っぽく微笑んだ。


「あたしが切原のこと、だいすきだからかも。とか考えもしないワケ?」



「…………ま、まじ?」



「人は誰しも不純な考えを持つものよ、切原クン?」


貴方の考えなんて、お見通し。

だって、あたしもおんなじだからね。



「てゆーかさ。別にあたし、彼氏出来ないんじゃなくて、つくんないだけなんだけど」

「は?!」

「アンタがいつまでたっても告ってくんないから片っ端から振りまくってたのよ」

「はぁっ?!!」

「…ちゃんと、捕まえといてね、赤也」



「……っ!!お、おぅ…沙紀」

(かわいいなー、赤也)








――――――――――
勢いで書き上げた産物。S系カノジョ。
(11/06/15)


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