きらきら





部活終わりの帰り道。

すっかりクリスマスムード全開になった街並みを横目に、私は部長の白石と並んで歩いていた。


「…チッ」

「イルミネーション見て舌打ちするやつ初めて見たわ…」


込み上げてきた不快感を隠しきれず思わず舌打ちしたら、間髪入れず突っ込まれる。

そんな可哀想なコを見るような目で見ないでほしい。

全く失礼なヤツだ。


「だって世間はクリスマスムード一色ですよ、白石サン」

「いや、なんで敬語やねん」

「…はぁ」


真っ白なため息が空気に混じって消えていく。まるでいまの私の心境。

隣を歩くイケメンは、どうせクリスマスのお誘いが多すぎて断り切れないほどだろう。


「……はぁぁ〜……」

「いやいや、タメ息深すぎやろ自分」


日替わりでマネの私を送ってくれる優しい部員たちも、クリスマスは各々で過ごすだろうし。


「…黒河?」


もう家族でお祝いするような歳でもないし。というか、我が家は元々イベントで盛り上がる家柄じゃない。


「…つか日本人クリスマス関係ないじゃんキリストじゃん」


考えれば考えるほど気分が落ちる。


「黒河っ」

「な、なに?」


急に大きめの声で呼ばれて驚いて振り返ると、白石の整った顔が間近にあった。

思わず、息をのむ。


(…ホント、綺麗だよね…)


イルミネーション効果かな。
彼がきらきら輝いて見える。

目を離せずにいると、白石が困ったように微笑んだ。


「なぁ…俺な、クリスマス、まだ予定ないねん」

「あ、うん…そうなんだ。誘い多すぎて決めかねてるの?大変だね」



「違う」



「…、ぇ?」


真剣な色を帯びた瞳に、言葉を無くす。


「最初っから、好きなヤツとしか、クリスマス過ごす気ないし」

「…ぁ、…そ、そうなんだ」


ていうか、白石、…好きな子いたんだ。

驚いてる私に追い討ちをかけるように、彼の口から、とんでもない発言が飛び出した。


「…黒河を、誘うつもりやった。…クリスマスは、お前と一緒に過ごしたいんや」


「え…ぇ、…?」



「…あー…そんな顔せんといてぇな…」


言葉に詰まっている私の態度をどう捉えたのか、白石は視線を大きく外した。

私の方は、完全に言われた内容を理解できずにいた。


いま、彼は私と一緒にって言った?クリスマスに、白石が私と?
そのまえに、クリスマスは好きな子と過ごしたい、って………?

それって、つまり……。



「え、ぇ……えぇぇっ!!?」

「…っ!」


急に大声を出したからか、驚いたようにこちらを向く白石。
グレーの瞳と目があって、急速に顔に熱が集まるのを感じる。


「…あ…あの、白石、…まじで?」

「…大マジや」


少しだけ照れ臭そうに告げられたら、こっちまで恥ずかしくなってしまう。


「…で、返事、聞いてもええか?」

「へ、返事?」


「クリスマス。いや、クリスマス終わっても…、これから、ずっと俺と一緒に居ってほしい」

「……ぁ…」



「…好きや、黒河」



クリスマスなんて、好きでもなんでもなかったけど。

こんなにもクリスマスムード一色の景色がきらきら輝いて見えるのは、きっと、彼と一緒だからなんだろう。


そっと手を重ねて。

小さく微笑った。


答えは、それで十分。






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初テニ短編なぜか聖書。
(10/12/24)

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