年下の。(後)




なんていうか。その、昨日。
面と向かって告白されました。

後輩の切原クンに。


「まじでか!」

「まじよ…。つかこんなときくらい食うの止めれや丸井」


切原クンと知り合ったきっかけとも言える丸井は、相変わらずお菓子に夢中だ。

相談する相手を間違えた。


「はぁ……」


「つーかさ、」


思わずため息をついた私に、丸井が手を止める。

不意に、色素の薄いビー玉みたいな瞳がこちらを見つめているコトに気づく。


「…な、なに?」

「黒河は、赤也のこと好きなんだろぃ?」



「……は?」


なんですと?


「いやだから、おまえ、赤也のこと…」

「え、いや、丸井なに言って…」


ガタッ


物音に振り返ると教室のドアの所に、渦中の人物が立っていた。


「き、切原クン…!」

「あ…!あの、すんません、俺…」


困った様子で佇む彼に上手く言葉が出てこなくて。


「さぁて、邪魔者は退散しましょーかね」

「ちょ、待って!」


立ち上がって教室から出て行こうとする丸井の制服を咄嗟に掴んで引き止める。

こんな気まずい状態で放置しないでほしい。

必死の思いで視線送るけど、あっさり掴んだ手を払われてしまった。


「アイツの事、もっとよく見てみろよ」


一言、私の耳元で囁いて。
丸井は爽やかに教室を去っていった。

残されたのは、切原クンと私。
夕暮れの静かな教室に二人きり。

しばらく言葉もなく見つめあっていたけど、不意に切原クンが口を開いた。


「…俺、期待していいんスか?」


「…っ」


どうしようもなく恥ずかしくて俯く。

そしたら、急に足元に陰が降りて。
気づけば彼が目の前にいた。


「やべぇ…、先輩まじ可愛すぎ」

「いやいやいやいや」


掠めるように呟かれた言葉を真から否定すると、顔をしかめられてしまう。


「沙紀先輩は自覚が無さすぎなんスよ」

「…そ、そんなこと…」


ない。って続けようとした言葉は、優しい声音に遮られた。


「…先輩。昨日も言ったけど」


鮮やかなグリーンアイがこちらを見つめている。
一瞬だって目を反らせなくて。
必死で見つめ返した。


「好きです。俺、年下だし、頼りねぇかもしんないけど…」


彼の一言一言に、温かい何かが胸一杯に広がっていくのを感じる。


「誰よりも、大切にするって誓うから。…俺を、好きになってください」


「…え」


すごい控えめな告白に呆気にとられていたら、我に返ったように切原クンが、


「あ、ち、違う!俺と付き合って下さい!!」


とか慌てて訂正するものだから。


「…あははっ」


思わず笑みが零れていた。


「…!せ、先輩…?」

「…あ、ごめんね、笑ったりして」


あまりにも心地よい空間。
貴方との時間。

それって、そういう事でしょ?


「…私も」

「…へ?」



「私も、切原クンが好きです」



笑顔全開の彼に抱き締められるのは、あと十秒後。







――――――――――
赤也かわいすぎる。
(11/06/14)


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