年下の。(中)
「…あ、切原クン」
「沙紀先輩!」
「いま部活帰り〜?」
「ハイ!」
夜にふとお菓子が食べたくなって、近くのコンビニに向かっていたら。
向こうから制服姿の切原クンが歩いて来るのに気づいた。
声を掛けると、めっちゃ笑顔で駆け寄ってくる。
ちくしょう。まじ可愛いぞ。
「先輩は買い物ッスか?」
「うん」
素直に頷くと、ニッコリ笑ったままの切原クンが、
「じゃ、俺も行きます!」
と進行方向を変えた。
「…って私はいいけど、切原クン、来た道戻るコトになるよ」
「いいんスよ、俺が先輩と一緒に居たいだけなんで」
「……え、」
なんか。とんでもない発言が聞こえた気がしたけど。
当の本人はサクサク来た道逆走を始めていて。
あまりにも彼が普段通りだから、私も気にしないコトにした。
「はい、これ」
「え?」
先に出ていた切原クンに、ペットボトルのドリンクを渡す。
「あ、お金…」
「あはは、いいって。先輩ですから、ジュースくらい奢りますよ〜」
律儀に財布を取り出そうとした切原クンに笑って告げた。
すると彼は困ったように微笑む。
「えっと、…ありがとうございます」
もしかして嫌いなジュースだったのかな。
「…あの、こっちと変える?」
控えめに尋ねたら、切原クンが慌てたように口を開いた。
「いやっ、これ好きなんで大丈夫ッス」
「あ、よかったぁ…」
「…っ」
安心して息をつく。
ジュースの好みも然りだけど、よく考えたら私、切原クンのことほとんど何も知らないんだ。
改めて、そんなことを思う。
少しだけ。胸が痛くて。
(……って、何に対してショックウケてるの私…)
「沙紀先輩」
「え?な、なに?」
考えに没頭してたら、不意に名前を呼ばれた。
振り仰いだ先には、見たことないくらい真剣な表情の切原クン。
驚いて、固まっている私に一歩近づいて。
「先輩は…俺のこと、只の後輩としか思ってないかもしれないんスけど…」
そう切り出した。
「き、りはら、くん?」
「俺は…、先輩のことが好きです。一人の、女の子として…」
(11/06/14)
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