Sweeeeet!!!!
放課後の教室。
今日の日誌を書きながら、私は目の前で大量のお菓子を貪る男を見つめた。
ふと、結構前に流行った芸人のツッコミを思い出す。
「…あま〜い…」
「あん?」
「いや、言ってみただけ」
すでに7個目となるエクレアが、丸井の胃袋へと消えていく。
ちなみに“それ”は、彼自身が購入したものではなく、隣のクラスの女子が昼休みに献上しに来た貢ぎ物だ。
「つか、貰い物の量ハンパなくね?」
「そりゃぁ、俺ってば人気者だから」
それは否定できないが。
「丸井ってフツーにムカつくよね〜」
「はぁ?!おま、失礼だろぃ!」
食べる手を止めてこちらを向く彼は、確かに整った顔をしている。
だけど、たぶん彼の人気は顔だけじゃなくて、誰とでもこうやってフランクに接する人の良さにもあるんだろう。
あと、人気者であるという自覚。
厭味なく自分をそうであると言い切れるのは、結構すごいことだと思うんだ。
「ムカつくくらい…人気があるよね、って話」
「…!」
日誌に視線を戻しながら、思ったままのことを伝える。
すると不意に視界に影が落ちて、何事かとすぐ顔を上げた。
(…って、…ちか…!!)
「なぁ…」
なぜか真顔で眼前まで迫っている丸井に、咄嗟に身を退こうと思ったけど、椅子の背もたれのせいで叶わない。
「ま、丸井…ちょ、乗り出しすぎ、でしょ…日誌書けないし」
「黒河、今のってさ…」
一個の机を挟み、向かい合って座ってた私達。
その机に被さるように身を乗り出している彼に、いっぱいいっぱいで告げるけどまるっと無視される。
「…やきもち?」
「いや、だから、やきもちとかそういう話の前に…………は?やきもち???」
「俺が女子に人気あるの、嫌なんだろぃ?」
動けば触れ合うほどの距離で、囁かれた言葉。
私は、意味を掴みかねて、丸井を見つめ返した。
「…ぇ、と……」
(いや別に、とは言い難い雰囲気だな…)
というか「女子に人気がある」という話だったっけ?
丸井は男女問わずみんなから人気があるからムカつくね、って話じゃなかっただろうか。
無意識に彼を見つめたまま考え込んでいた。
「…〜っ…つーかおまえ可愛すぎ!」
「…っな!」
私のその沈黙をどう捉えたのか知らないけど、突然、丸井との距離がゼロになる。
人の体って温かいんだ。
なんて考えが頭を過って、自分がいま彼に抱き締められていることを覚った。
なんでこんなコトになってるのか正直意味が分からない。
されるがままな私を覗き込むように、丸井が視線を絡めてくる。
「…俺、おまえのこと超好きだわ」
「……っ?」
驚いて、言葉が出てこない。
顔に熱が集まるのを感じる。
そんな私に追い討ちをかけるように、お菓子なんかよりよっぽど甘い囁きが耳を襲った。
「黒河…好きだ…」
「…ま、丸井…」
「大好きだ」
甘い甘い言葉。
拒絶する気もない私は、きっともう、彼に捕らえられてる。
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前からヒロインが好きだったブンちゃと、なんとなく彼が気になってたヒロイン。
(11/06/14)
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