コタツとみかんと



「幸村、今年一年間お世話になりました」

「……どうしたの改まって」



オコタで暖をとる幸村にお茶を出しつつ思いついたことをそのまま伝えてみる。

不思議そうな表情が可愛い。

とか思ってたら「まぁ座れば」と促された。
てかここ我が家なんだけど。



「一年、か……あっという間だったね」

「うん」



隣でみかんを食べる彼。
ちなみに剥いたの私。
もう一々つっこむ内容ですらなくなったのは、二人の関係性がそんな感じに馴染んでしまったから。

去年の春に付き合いだした頃はもっと紳士だったはずなんだけどなぁ。



「今年もテニスしてた記憶しかないよ」

「え、私、幸村がテニスしてるの見た記憶ないけど。ラケット使う拷問とか折檻の類ならしてた記憶はあるけど」

「フフフ、黒河も一度俺とテニスどうかな?」

「すみません」



謝罪してお茶を啜る。

もうすぐ年越し特番とか除夜の鐘とかはじまる時間だ。
外は暗いし寒いし。






「……黒河?」



ゆるゆると幸村の方に寄ってピタリとくっついてみる。
名前を呼ばれるけど、視線は湯呑みを見つめたままだ。

「…………ねぇ」

「ん?」

「来年もこうやって幸村と年越ししたいなぁ」



触れた肩越しに、幸村が微かに驚いたのが分かった。
あんまり過去とか未来とか、そういう話を普段の私がしないからだと思う。



あまりリアクションが返ってこないから、顔を上げて窺う。



幸村はいつもと変わらない綺麗な笑顔。



「何言ってるの」

「えぇぇ?」



まさかの全否定に地味なショックを受けている私に、彼は笑顔を絶やすことなくキスをした。





「来年も、じゃなくてこれからもずっと、だよ」










――――――――――
来年も再来年もずっと、よろしく。
(12/12/30)


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