包み込む青





「なんで“せーいち”とか呼ばれてんの」

「え?」

「だから、ファン達になんで名前呼びされてんのって聞いてるの」



キョトン顔が可愛いとか、思ってないから。



「沙紀って、……そういうの気にする子だったんだ」



さっきまで読んでいた本をそっとテーブルに置く精市は、少し意外そうな表情をする。

そりゃね、あんな大々的に呼ばれてたらね。



「超隣いるのに「せーいちステキーすきー」とか彼氏が言われてる彼女のテンションの下がりようわかるかな」

「でも基本的にそういうの、無視してるけど」

「答えでもしたら即殴るわよ」

「殴るんだ……」



困ったように笑う精市は確かに悪くない。
元々人気があるのは分かってたし分かって付き合ってんのは私なんだけど。



「……のに」

「え?」

「私は彼女になるまで“幸村”だったのに」



別に呼ぶなと言われた訳じゃないけど。
はじめて名前を呼べたときは嬉しくて、恥ずかしくて。

だから正直、簡単に彼を呼ぶ女の子たちが羨ましいんだ。



うつむく私の頬を、精市のおっきな手が包む。



「ねぇ、沙紀」



優しい声。
視線を上げたら、すぐに蒼の瞳と出会う。



「君は知らないかもしれないけど、俺も同じなんだよ。いや、俺の方がもっと酷いかもね」

「……え?」



笑みを絶やすことなく、精市は言った。



「沙紀が俺以外に名前で呼ばれて、答えて、笑う度……そいつら全員の視覚を奪いたくなる」

「え?」

「まぁ主にレギュラー陣だから、我慢してるけど」

「え??」



ニッコリ。
とか効果音が聞こえてきそうなくらいの気持ちのいい笑顔。



「でも俺は答えてないわけだし……次から沙紀が名前呼びされてるの見たらその場でキスでもしようかな」



その目が本気だったのは、言うまでもない。










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ミラクルナイ再び!DVD発売おめでとう幸村!
(12/11/14)

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