無色のFrankenstein'sMonster











「沙紀は何のために俺を創ったんや?」

「理由?そんなものを知りたいの?」





私が創り上げたのは、嘗て傲慢な科学者気取りの学生が造った哀しい怪物なんかじゃない。



優しい心に人力を遥かに凌ぐ力量、膨大な知識。
そして、芸術品とも云える美しい容貌。


まさに完璧な、誰もが理想とする人間。





それを、創り上げた。





「蔵、貴方は存在そのものが奇跡なのよ」





そう告げて優しく口付ければ、彼は嬉しそうに笑い。
そっと私へと寄り添った。





「沙紀のために存在できるなら、それほど幸せなことはないわ」





彼という奇跡の創造物を、私は世に出すことはしなかった。
自分が成し遂げたことが、自己満足の果ての偉業だと知っていたから。

だけど、ふとしたとき。
従兄弟たちに彼の存在を知られてしまったんだ。



世間に晒すと言い出した彼らを、私は必死で止めた。

そう、自らの身体を差し出してまで。
大事な創造物を守った。





その、翌日の夜のこと。





自宅へ戻ったとき、鼻につく異臭に私は慌てて彼の元へ向かった。

そして、リビングで見たのは、あまりにも凄惨過ぎる光景。





「……ぁっ、……うぇぇ…っ」




真っ赤に染まるその空間の中央に佇む、“彼”。



戦慄する私に、彼は笑った。



いつものように、綺麗に。





「沙紀、おかえり



コイツら、俺の沙紀を穢したんやろ?



沙紀は、俺の存在理由や。俺がいっぱい愛したるから、他のヤツとか、いらんやろ?



いらんもんは、壊して、また、創り直したらええやん。……な?」





一歩此方へと踏み出した彼の足下が。



ぐちゃり、と鳴った。










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ボクハキミノモノキミハボクノモノ。
(12/10/31)



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テーマ「人外ファンタジー」
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