夏音




「ほら、いくよ。沙紀」

「……は?」



家で3DSしてたら隣のお家の精市クンが迎えに来ました。







「なんで、夏祭りに行くなら事前に誘って頂けなかったのでしょうか?」

「そんなのさっき思いついたからに決まってるだろ?」

「あ、そっすか……」



昔から精市はこんな感じだ。

すごく大人びてる、とか。
しっかりしてる、とか。

近所のおば様方(私の母含む)から絶大な支持を得てるけど、私からしてみれば彼ほど子供心を忘れずに成長しちゃった人も珍しいと思う。

間違いなく9割は思いつきと本能で動いてる。



「沙紀、ぼんやりしてるとはぐれるよ」

「……っ」



そんな彼にうっかり好意を抱いてる私にとっては、その突飛な言動はとんでもないダメージを与えるんだ。



突然握られた手を凝視してたら、振り返った精市が怪訝そうに眉を寄せた。



「なに微妙な顔してるの。俺と夏祭りとか、普通の女子なら喜ぶとこだよ」

「……せっかくなら、精市の浴衣姿見たかった」

「そう言うと思ってわざと着てこなかった」

「はぁぁ…?!」



どんだけ性格歪んでんの!



「あ、焼きそば食べる?青海苔オニのように掛けてもらおうか」

「精市!それまじ鬼畜!!」



せっかくの夏祭りなのに。
周りには可愛く浴衣やメイクに身を包んだ女のコたちがいっぱいいるのに。
私は私服のほぼ素っぴんで。



ちょっと悲しくなって俯きかけた私の頬を、おっきな両手がフワリと包み込んだ。



「ちゃんと顔上げてないと、俺が見えないだろ」

「はっ……?」





半ばムリヤリ上げられた視線の先には、いつも通りの精市の笑顔。



「俺もどうせ沙紀しか見てないんだから、周りなんてどうでもいいんだよ」



自信満々に告げる彼の表情は、後ろに咲いた夜空の華よりも、何倍も輝いて見えた。










――――――――――
ゆーな様よりリク頂きました。
「幸村と夏祭り」
二人とも私服ですが(爆)

ありがとうございました!
(12/8/18)



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