ゆらり
「しゃーぼんだーま、とーんーだー」
プワッ
と、うまれた泡の玉は、頼りなく私の視界を漂う。
試しにちいさく息を吹き掛けると、パチンと静かに弾けて散った。
「あ、ふらー!沙紀っ」
頭を軽くはたかれ、不機嫌に視線を上げるとゆーじろがこっちを睨んでる。
なんでシャボン玉いっこ割ったくらいで頭叩かれないといけないのか、理解できない。
「いませっかく上に飛んでこうとしてたのによー……」
しゅんとしてしまった彼に少しの罪悪感を感じて、その手のなかにあったストローと原液の入ったコップを取る。
「見てて」
微笑めば首を傾げられてしまったけど、気にせずストローにそっと唇を寄せた。
優しく息を吹けば、小さな虹色の泡が、ぽこぽこと空中に飛び出していく。
「おぉ……!沙紀っ、スゴイさぁ!!」
無邪気に笑うゆーじろを見てたら、なんかあったかいものが胸に宿る気がするんだ。
「……おっきいの一つより、ちっちゃいのいっぱい飛ばした方が綺麗だよ」
「ハイ!」とシャボン玉の道具一式を返せば、ストローを持ったままなぜか固まって動こうとしないゆーじろ。
「ほら、やってみたら?」
促せば、顔を赤くした。
「…………、やーが使ったの、使っていいのか?」
「え?」
「間接ちゅー、やっし」
夏のはじまり、恋のはじまり。
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何かふわふわした話がかきたくなったので。
(12/06/22)
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