きみのとなりで。




なんでわかってくれないの。
なんではなれていくの。
なんでわたしはまちがうの。

“なんで”で溢れかえった世界は、わたしには、とても息がしづらいの。





「まるで、二歳児だな」


アイスブルーの冷めきった瞳が、私を見据える。
彼の言葉は、氷柱みたいに私の心に鋭く突き刺さるけれど、それは決して不愉快なものじゃない。

いつだって、ハッと目を醒まされるような冷たさだから。


「跡部は自分の存在とかに疑問をかんじたことはないの?」

「ねぇよ、俺は俺だ」


さすがというか、なんというか。

確固たるものをもつ彼は、なんて輝かしいんだろう。
眩しくて、直視するのも躊躇う。


「確かに、跡部は跡部だよねぇ」

「それ以外に何があるんだ?自分は、自分でしかないに決まってんだろ」

「わたしは、たまに分からなくなるよ」


なんで、わたしはわたしなんだろうか、って。
なんで、わたしはいま生きてるのかな、って。


「ハッ…頭がいいのか悪いのかわかんねぇ奴だな」

「生まれつき、哲学的なのかしら」

「言ってろよ」


冗談を一言で切り捨てられた。
でも、こんなわたしとの関係を断ち切ることのない彼は、きっと結構なお人好しだと思う。


「なんで…、跡部はそんなに優しいの?」


不意に出た呟きに、初めて驚いた表情を見せる跡部。


「…おまえ…」

「なに?」



「バカだろ」


うっわ。
真顔でいわれた。

ちょっとイラッとしたけど、どうやったって、彼には言い負けてしまうから。

ただ黙ってその凛とした瞳を見つめ返す。


「そんなの…おまえが、おまえだからに決まってんだろ」


「…っ」


自信が、入り込んでくるような感覚。


「解ってもらえねぇなら分からせろ。離れていくなら繋ぎ止めろ。…それでも間違うなら、俺が導いてやる」

「…うん」

「おまえは、俺の隣にいればいい」


「うん」



この世界はとても息がしづらいけれど。
それでも、前をみて生けるのは、きっと貴方のおかげ。








――――――――――
ちょっとおかしなヒロイン。
そしてまた名前変換ない。
(11/04/01)


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