かばんの話。
「かばんを買ったんだけど」
「…………。……ふぅん」
部室にいた幸村に世間話を振ってみたら、すごい興味無さげに相槌をうたれた。
もうちょっとフリでもいいからノッてこいよ。
「……黒のかばんなんだけど」
「あぁ……いいよね、黒」
柳生から借りたって話の推理小説から視線も上げずに同意される。
返事に適当さが滲みでてる。
そんなに私の話に興味がないのか。
多少いらっとしてきた。
その小説の犯人ばらすぞ。
「こないだ買った服に超合うと思うのね」
「へぇ……」
いつまでも態度の変わらない幸村にちょっと涙が出そうになる。
だって女のコだもん。
あ、ごめんなさい冗談です怒らないで。
しかしこのやろー、まじで視線すら上げやしねぇ。
「幸村ぁ」
「……」
「幸村神の子」
「……」
「幸村に五感奪われ隊」
「……」
「幸村まじイケメン」
「知ってるよ」
(……なん、だと……!)
しつこく名前を連呼してたからか、ようやく幸村は小説から顔を上げて深ぁくため息をついた。
なに。
そんなに柳生の小説面白くなかったのか。
「……じゃあさ、沙紀」
「なに?」
「次のデートで持っておいでよ」
「…わかっ………、ん???」
あれ?なにかおかしいぞ。
「……私って、幸村と付き合ってたんだっけ?」
「フフ、沙紀はバカだから気づいてなかったんだね」
「……まじか!」
じゃあとりあえず、次のデートはいつですか?
――――――――――
かばん関係なくなった。幸友との夢書き愛の産物。
(12/1/30)
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