チロルハート





今日は、聖バレンタインデー。

一人の悩める少年がいた。





「はい!チョタはぴばーっ」

「え、あ、ありがとうございます沙紀先輩!」

「チョタは誕生日だから特別に10個入りチロルね!あ、ジロちゃんハピバレ〜」

「沙紀ちゃんありがとーっ、沙紀ちゃんからならチロルみっつでもうれC〜」

「え。ジロちゃんそれ然り気無く貶めてる?」

「あはは。そんなことないよ!」

「……。あ、がっくんに宍戸、チョコ恵んでやるよ。その代わりホワイトデー80倍返しな。『(チロル+私の優しさ)×3×80=ホワイトデーのお返し』だからな」

「なんだその理不尽な方程式?!でも案外良心的な値段!」

「クソクソ沙紀!俺たちだってチョコ貰えんだぞ!ゆーし達程じゃねーけど!!」

「ふっ、負け惜しみを」





「…………」

「……跡部。言いたいことあるんやったら黒河に直接言ぅた方がええで?」

「うるせぇよ忍足」



跡部景吾。

彼の周りはそれはもう、今日をきっかけにお近づきになろうとする女子たちからのチョコで溢れている。

だが、彼は不機嫌極まりない表情で沙紀を見つめていた。



「……あいつはマネージャーだからな……部員たちにもチョコを渡すのは分かる。だが……なぜ俺様までこのチロルチョコとかいうものなんだ……!!」

「男の嫉妬は醜いで〜。貰えただけええやん」

「黙れ忍足メガネ割るぞ」



跡部に脅された忍足は、メガネを庇いながらマネージャーである沙紀の姿を見留める。

楽しそうに部員たちと話す彼女が、少しだけ悪戯っぽい視線をこちらに向けたことに、跡部は気づいただろうか。



「跡部、お詫びっちゅーのもなんやけど……いっこ世間知らずのボンにええこと教えたるわ」

「あーん?」



沙紀に後から怒られるかもしれんな。



「俺らのチロルはでっかい袋のバラエティーパックやけど、跡部のんだけ、いっこ20円の個売りのやつなんやで」

「……、は?」



たぶん、まだ理解できていないのだろう彼を横目に、忍足はみっつのチロルのうちのひとつを口に放り込む。



分かりにくい彼女の愛が跡部に伝わって、彼が真っ赤になるまで、あと10秒。










――――――――――
これが限界だった(笑)ネタは私の心友から頂きました!たぶん跡部はチロルチョコを知らない。
(12/1/27)


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