go on and on


追いかけていたい。

届くかなんて、解らないけど。

答は要らない。

今はただ、前へ。





いつからだったろう。
漠然と描いていた「夢」というものが、一つの輪郭を持ち始めたのは。


教室の全てが朱に染まり始め、時間の経過を告げる。

私の机の上には、たった一枚の紙切れ。

だけど、この薄っぺらい紙が、私をいつまでも放課後の教室に縛り付ける。


「………はぁ…」


これで何度目の溜め息だろう。


「…沙紀、まだおったんか」

「……白石」


聞き慣れた声に振り返れば、案の定、部活のジャージを着た友人の姿が在った。


「なに怖い顔してん。……進路調査書?」


此方へと歩み寄ってきた彼は、その澄んだ瞳を私の机上のそれに向けて呟く。


「これ、提出昨日までとちゃう?」


その通りだが。


「先生にお願いして今日まで延ばしてもらったの」

「今日まで…て、もうすぐ、完全放課の時間やで」


全くもってその通りだが。


「………、…っ」

言葉もない。

私の中で言い様のない感情が渦巻いて、不覚にも目の奥が熱くなってくる。

不意に、俯いた頭に真っ白なタオルが被せられた。


「…汗くさい」

「うっさいわ、我慢せぇ」


零れた言葉は思ったよりもしっかりしていて、私は「あ、まだ大丈夫だ」と安心する。

苦笑混じりの白石の言葉を、笑顔で受け止めることが出来た。


「………、白石…。…私、外部受けるわ」

「…え?」

「うん。……うん、やっぱり、夢…追いかけてみたいんだ」


これは、自分勝手な決意表明。
巻き込まれた白石は可哀想だけど、誰かに、聞いてほしかったんだ。


「つか、なんか…ごめん。急に意味わからんことを…」



「ええやん」



「…っ!」


向けられた、笑顔は。

呆れたものでもなく、馬鹿にしたものでもなく。

ただ。ただ純粋に。

私の想いに共感してくれるものだった。


(ああ…、そうか……)



「がんばりや。……俺も、沙紀に負けんと…夢、叶えられるよう頑張るわ」


彼は、ひたすら前に、夢に向かって進んで行く人だから。

きっと、迷いながらでも、前に。



だから私は、そんな彼に聞いてもらいたかったんだ。

言葉を、勇気を、与えてほしかったんだ。





「白石。…がんばるね、私」


きっと、きっと、きっと。



「おう」



諦めるなんて、絶対に。

出来ないよね。








――――――――――
『go on』まじ神曲。
(11/05/25)

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