ありがとうを伝えて
「……幸村。やばい」
「沙紀」
頭を撫でられるけどもう何がなんだか。
緊張のあまり必死で覚えたはずの内容とか全部飛びそう。
あらぬ方向を見つめてる私に、幸村はいつもと変わらず優しく微笑み掛けてくれる。
「沙紀ががんばってたコト、俺はちゃんと見てた。……だから、大丈夫」
「……!」
「大丈夫だよ」
本番前にそんな涙が出るようなこと言うのは禁止だよ。
涙ぐみそうになった瞳を見られたくなくて、慌てて顔を伏せる。
もう一度、優しい手が私の頭を撫でてくれた。
「……幸村」
「ん?」
「私、がんばるね」
不思議だね。
笑顔で見送る貴方が「大丈夫」って言ってくれたから、もう何も心配ない気がするんだ。
だから。
私もきっと、笑顔で貴方の元に戻ってくるね。
――――――――――
試験が迫っています。幸村よ、私に力を。
(12/1/13)
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