花開く






薄明かりに照らされた神社の境内を、並んで歩く。

寒いなーとコートのポケットの中でカイロをかさかさしてたら、不意に幸村がこっちを向いた。


「手、繋ごうか」

「……ん」


ちょっと恥ずかしかったけど、実は彼の手があったかいことを知ってるから。

差し出された手を迷わず握り返す。


「黒河は初詣とかしないタイプだと思ってたよ」


クスクスと笑いながら突然そんなことを言い出す幸村に、私は不機嫌な視線を向けた。


「……ほんとならね。寒いし、有名なトコだと人多いし」

「割りと小さめの神社を選んだのに、これだけの人がいるからね」


周りには私たちと同じ目的であろう人たちが、身動きが取れないほどではないけれどそれなりにいる。

幸村がしっかり手を引いてくれるから、人とぶつかることはない。


「……幸村がいるから」

「……え?」


不意に零れた言葉を、彼は聞き逃さなかったらしい。

驚いたように此方を見つめる幸村に、私はもう一度繰り返した。


「幸村がいるから、来ようと思ったんだよ」

「……!」

「……終わりも始まりも、一緒にいたいと思ったから」


珍しく本能に従ってみるのも悪くないと思ったんだ。



握られた手に、少しだけ力がこもった気がした。





「……ぁ、」





新年を知らせる音色が、辺りを包む。



幸村を見れば、相変わらず優しく微笑んで。



「黒河」



柔らかい声が、私を呼ぶ。



「あけましておめでとう」





今年の始まりは、貴方の笑顔から。










――――――――――
あと3時間で2011年終わりますよ。
(11/12/31)


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