FCSM
「沙紀!」
「いまなんて言うた?」
「え?だから…こないだ地元帰ったときに近所にしま○らできてたって話…」
「しま○らやって?!!」
「ホンマか!!」
…え?だからなに???
―――――。
例えば、県も違えば文化も違う。
それは仕方ないことだ。
でも、まさか店の名前を口に出しただけでそんなオーバーリアクションされるなんて、誰が予想出来ようか。
―――――。
「なぁ!沙紀の実家の近くにしま○らができたて聞いたんやけど、ほんまなん??」
「き、金ちゃん!それ誰に聞いた?!」
というかそんな下らないこと言いふらすのは、あのアホ達しかいない。
「ええなぁ!沙紀の家族はいつでもしま○ら行き放題、服選び放題やん!」
「せやなぁ〜、ファッションセンターやからなぁ〜」
「謙也!蔵!あんたらバカにしてんの?!」
よくわからないテンションで絡んできたテニス部の人気者二人に、思わず大きな声が出る。
けど二人はドコ吹く風。
「しま○らバカにするワケないやろ」
「そうや。ええことやないか、近所にしま○ら」
「つかまじで『しま○ら』連呼しすぎ」
私まで言ってしまった。
「ていうか…なんでそんな流行ってんの?」
「しま…」
「もういいから」
口を開こうとした謙也をソッコー制して、蔵の方に向き直る。
少しだけ苦笑した蔵だけど、またいつもの澄ました笑顔を浮かべた。
「おもろない?ファッションセンターて」
「え?」
「ファッションの中心やで?」
「はぁ…」
「自らファッションの中心を名乗ってんねん」
「そうだね」
「リアクションうっす!!沙紀どんだけやねん!」
私の反応が気にくわなかったらしい謙也が激しくつっこんでくる。
しかしそんなん知ったコトじゃないし。
ていうか逆にツッコミたい。
どんだけネタに対する食付きいいの。
呆れを隠せないながらも、なんとなく笑いが込み上げてくる。
「…フフッ」
自然と、笑みが零れた。
「「…あ…」」
「え、な、なに?」
すると今まで息つく間もなく喋り続けていた彼らが、急に私を見て固まる。
何事かと見上げれば、満面の笑顔が返ってきた。
「「…笑た!!」」
「……はい?」
呆気に取られる。
言われた意味がよく分からない。
言葉を続けられないまま彼らを見つめ返す。
「最近、自分めっちゃ元気なかったやろ」
「え…、そ、そうなの?」
それは初耳だ。
謙也の発言にビックリしてたら、さらに驚く内容を蔵が続けた。
「地元からこっち戻って来てずっとや。俺ら、沙紀が地元帰りたがっとるんやないかて…めっちゃ心配してん」
「ま、まじか」
「まじや」
なんとまぁ信じられない。
だからあんなムダにウザいテンションだったのか。
何だかこそばゆくて、柄にもなく照れてしまう。
「あの、さ……私、確かに地元好きだけど…」
でも、まっすぐに。
これだけはまっすぐに伝えたいから。
顔を上げ、自分にできる目一杯の笑顔を浮かべた。
「負けないくらい、二人のコトが大好きだから!」
―――――。
「二人っちゅーことは、まだ勝負はこれからやな、白石」
「フッ、謙也には負けへんで」
「二人とも、なにブツブツ言ってんの?」
――――――――――
F=ファッション C=センター S=しま M=○ら……実話を元にしてます(笑)
(11/04/09)
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[mokuji]