Insincere Eve




今日は、クリスマスイヴです。


なのに私はなんでこんなところでこんなコトをしているのか。





「あえて聞こうか、なんで私は呼び出された?」

「そんなん決まってるやろ」

「俺らがケーキとか作れるわけないっちゅー話や!」


白石。忍足。
アンタらとクリスマスを過ごしたいって女子ならいくらでもいるよ。
残念な話だけど。


「だからって…なんで私がわざわざ白石の家まで来て、ケーキ作りさせられてんの?」

「……っそ、それはアレや」

「どれだよ」


生クリームをハンドミキサーでうぃんうぃんしながら横目に白石を見やる。
少しだけ気まずそうにしているってことは罪悪感があるってことか。


「……肝心のケーキ、予約してへんかってん」

「じゃあなんで材料はばっちり揃ってんのさ?」

「……うっ」


徐々に声のトーンが落ちる私に視線を反らす白石。

その向こうで忍足が笑ってるのに若干イラついて睨んだら、白石と同様に視線を反らされた。

こいつらは揃いも揃って。


「別にいいけど。どうせなら前日とかから言っといてよ……イヴの夕方に呼び出すとかホントないわ」


デコレーションを始めつつ文句を溢すと、白石が「すまん」と呟くのが聞こえた。

叱られた子供みたいに項垂れるもんだから、何だか可笑しくて。
自然と笑みが浮かぶ。


「……怒ってるか?」

「怒ってないよ」


クリームの上に苺を置けば、ケーキの完成。

さて。私の仕事はおしまい。

ケーキに簡易蓋を被せてキッチンに背を向ければ、白石が正面で私の行く手を遮った。

なんだよ。邪魔だな。


「ちょ、黒河っ、どこ行くねん!」

「は?帰るんだけど」

「一緒にケーキ食べようや!」


いやこれ作ったの私なんだけど。

まぁ、それはおいといて。


「……え?だって今からテニス部のクリスマスパーティーでしょう?私、テニス部関係ないし…」

「いつも差し入れとかしてくれるやろ」

「そりゃ、頼まれるからね」

「…俺たちの中では黒河はマネージャーみたいな存在なんや」


えらい勝手に決まったな。

私は白石のクラスメートだけど、テニス部に直接的な関わりはない。

それがクリスマスパーティーに参加するとか。
普通におかしいだろ。

忍足に助けを求めようかと思ったら、いつの間にかキッチンからいなくなっていた。

どういうこと。


「黒河……」

「……ちょっと。白石、近い」


整った顔が微妙に接近してくるもんだから、私は遠慮なく退く。

だけどそう広くないキッチンの中ではすぐに追い詰められてしまう。

いやだからどういうこと。


「……少しでも俺のこと気にしてくれとるから、こうやって家まで来てくれたんやろ?」

「……は?」


頼まれたら断れない性格だからとは言いづらい空気なんだが。


「…クリスマス、黒河と過ごしたかってん……」

「いや、えーっと……白石くん?」



「ずっと前から好きやった」


まさかの。

衝撃の告白。


完全に動きの取れない私に、白石はニコリと爽やかな笑みを浮かべて。


「一回言うたら吹っ切れるもんやな。……絶対に逃がさへんよ、沙紀」

「……いや、あの、」

「これから、ずっと一緒におってな?」



なにこれ。

強制?



背中に薄ら寒いものを感じながら、笑うしかない私。





イヴに待っていたのは、とんでもないクリスマスプレゼントでした。










――――――――――
もう白石=変態の方程式しか出てこない。
(11/12/20)


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