5.
「…夕日が眩しい……」
本来ならもう、とっくに家に帰り着いて録画しておいた銀魂を見ているはずなのに。
何で私が放課後の教室でひたすらホッチキスをバチバチやっているかと言えば。
勿論、魔王の命令より他ない。
最後の一束を留め終えて、私は思いっきり机に突っ伏す。
ああ、心地好い疲労感……。
「……おわった……」
「お疲れさま」
「ヒィィッ……!」
独り言にまさかの返答があり、私は慌てて顔を上げた。
笑顔で此方を見下ろすのは、ジャージ姿の幸村君で。
いつもと少し雰囲気の違う彼に思わず見入ってしまう。
「なに見惚れてるの?」
「はっ、あ、すみません……」
「……黒河は俺のコト好きなのかな?」
「……はぁ?」
いや今までの所業からそれは天変地異が起こらない限りあり得ないだろうよ。
何となく不穏な気配を感じて、座ったままの私は彼を見上げる。
綺麗な色の瞳が、無垢な光彩を称えて此方を見下ろしていた。
「いいんだよ、遠慮しなくて」
「いや……その、遠慮とかではなくて……」
「ほら」
『跪いてキスしてみせて』それは最早、好きというより崇拝者の行為ではないでしょうか魔王様。
それでも、彼はいつものように穢れなく微笑うのだ。
「俺も黒河が好きだよ」
そう私の耳元で囁いて。
(11/11/20)
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