「無難に赤のカードだね……」






「黒河せんぱぁーいっ!赤を選んでくれるって信じてたッス!!」

「ぎゃふ……っ」


どーんっ!と激しく抱きついてきた赤也を支えきれず一緒になって、部室の床に倒れ込んでしまった。

昨日帰りに掃除しといてよかった……。



じゃなくて!



「赤也……アンタ何で部室をセレクトしたの」

「だって幸村部長にカード渡されたトコから一番近いっしょ?先輩、来るのラクかなって思って!」


ヘラ、と笑う彼は意外と天然で気遣い上手かもしれない。

末恐ろしいわ。


「ありがと。……てかさ……っ」

「……なんスか?」


さっきから気になっていたんだが。


「なんなのその犬耳……っ!!」



可愛さ犯罪級なんだけど!!!



赤也の頭に乗っかる犬耳カチューシャが、彼が動く度にフワフワ揺れる。
馴染みすぎて違和感無さすぎて、本当に可愛い。

赤也は猫っぽいと思っていたが犬も悪くないかもしれない。



いや待て私。



思考が危ない。



私が変態ちっくな妄想に入っていたら、当の本人は不満げに眉を寄せていた。


「黒河先輩っ、これ犬じゃなくて狼っすよ!」

「あ。狼男なんだ」


どうやら仮装の一部らしい。

どうせなら尻尾もつけてくれ。



がっつり見入る私に、赤也は少し恥ずかしそうに頬を掻いた。


「そうッス。……だから先輩、俺にお菓子くれないと……悪戯しちゃいますよ」


ニヤリと、いつもの不敵な笑み。



やめてくれ。

私が悪戯しそうだから。



「……っ赤也は何でそんなに可愛いかなぁ〜」


お姉さんはキュンキュンしてしまうよ。


「なっ、黒河先輩のが可愛いですよ!」

「いやいや赤也のが可愛すぎる」

「いーや先輩の可愛さに勝るものはないね」

「そういう赤也の可愛さは犯罪級だから」

「先輩の……っ!」

「赤也が……っ!」





ヒートアップしていくこの不毛なやり取りをまさか幸村に聞かれていて、挙句そのことをこの後暫くネタにされるなんて。

このときの私は知るよしもない。










――――――――――
眠い。
(11/10/15)



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