winkle...



誕生日に独りきり……。
いや、別に寂しくないし。
寂しいはずないじゃん。


みんなからメールきたし、一昨日プレゼントだって貰ったからね。


例え一人暮らしの独りきりでもそんなの…………。





「あー……トト●かわゆす」


ジ●リ映画を見ながら誕生日を過ごすとか、つらすぎるわ。

しかし連休だもの。

仕方ない。

予定を聞かれたけど、「誕生日だけどぼっちで暇です」とか私のちっぽけなプライドが言わせねぇ。

だから仕方ない。



何で今年の私の誕生日、休日だったんだ。


「……はぁ……ネコ●ス乗りた……」




ピーンポーン……




「……うわ。しかもこのタイミングで勧誘とかしぬ」


まさかのインターホンに私は渋々立ち上がった。


「はぁい……」


受話をONにすると、予想外の声が聴こえてくる。


『黒河ー起きとるねー?』


苦笑混じりのその声の主は、紛れもない彼。


「千歳?!」


なんと。

私がジ●リ作品とか見てたから、無意識に召喚してしまったのだろうか。


『誕生日ケーキば買ってきたとやけど……もう食べたやろか?』

「まっ、まだ……!てかちょ、と待って、いま開けるし……っ」


なんと。

私がジ●リ作品見ながら寂しくないよとか言ってたのを感じとってくれたのだろうか。





開いたドアからのっそりと入ってくる千歳。

でかいくせに可愛いその姿に、さっきまで画面の向こうで動いていたトト●のコトを思い出した。


「誕生日おめでとう、黒河」

「あ、ありがと……、にしても突然だったね」

「昨日から準備はしとったとやけど、連絡する前に寝てしまってねー」

「そうなんだ……」


つまり、千歳は。
昨日から私の誕生日を祝うつもりだったと。

嬉しくてにやける口元を引き締めて、彼に向き直る。

和やかな笑顔が此方を向いていた。


「あの、ホントに……ありがとう。嬉しい」

「……黒河が喜んでくれて、俺も嬉しいばい」

「……っあ、私、コーヒーいれるね!」


爽やかにとんでも発言をしてくれやがる。

思わずキュンとしてしまうような台詞を言われてしまったよ。



キッチンでコーヒーを入れ始めた私に、不意に思い出したといった体で千歳が口を開いた。


「そういえば、黒河に言おうと思ってたコトがあったとやけど」

「んー?なにー?」



「俺、黒河のコト好いとぅよ」



「…………水筒?」


あはは、と爽やかな笑い声が響く。


「好き、ちいうコトやね」



「あぁ……すき、ね………」





え?






後ろから、大きな体に抱き締められる。


「……あ。あったかい」

「黒河のためなら人間カイロになってもよかよ」

「なに人間カイロて」


自然と笑みが溢れて、緩やかに振り返ったら。

おんなじ表情の千歳と目が合う。



何だよ。

タイミングがよすぎるよ。


「……私も、好いとぅです」


千歳が、また、あははと笑った。









――――――――――
すいとぅです。は言わねぇ。
(11/10/12)



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