pace...
沖縄に来て、早半年。
時間の流れとか。
自然の豊かさとか。
人の暖かさとか。
全て愛しいけど。
「……実家が恋しい…」
海辺から夕日を眺めてたら、無性に切なくなってきた。
まさかの突然ホームシック。
無意識に呟いた独り言に穏やかな声が返ってくる。
「沙紀、どうしたんばぁよ?」
「凛ちゃん」
「ちゃん言うな」
眩しい金色の髪がサラサラと海風に揺れて、私の頬を掠めた。
海辺なのに、何でそんなにサラつきを維持できているのか、不思議で仕方ない。
「……やーが元気ないと、気味が悪いしよー」
怒ったように視線を反らすのは、彼なりの照れ隠しだと。
いつか彼のチームメイトの木手クンが教えてくれた。
私より少し年下の彼は、私よりだいぶ気配り上手だ。
思えば最初に声を掛けられたのも、慣れない沖縄での生活に落ち込んで、この海辺で一人反省会をしていた時だ。
「凛は優しいねぇ」
「はっ?」
脈略のない台詞に、凛が驚いて此方を見やる。
そういう仕草にいちいち癒されてる私は、彼にかなり依存しているのかもしれない。
年上の癖にホントに頼りないなぁ、と自分がイヤになる。
「大丈夫だよー。気にしないで」
今更だけど、そう言って笑ってみせた。
「……ムリやっし」
「……え?」
不意に温かい香りに包まれる。
オデコがコツンとぶつかって、私の視界は凛で覆われた。
「わんの中、やーでいっぱいだから」
「……っ」
普段見せないような、柔らかい笑顔に引き込まれる。
「……沙紀、しちゅんやさー」
その一言で、私の中の切ない気持ちは温かさに溶けていく。
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沖縄いきたい(2回目)
(11/10/12)
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