ating...
「沙紀っ、沙紀!」
「お、ジロちゃんが起きてる。どうしたの?」
「トリックオアトリート!」
おおぅ。唐突だな。
放課後の廊下で笑顔で駆け寄ってきたジロちゃんは、私の前に立つと元気にそう告げた。
それはハロウィンの魔法の言葉。
元来、日本人には直接関係のないお祭りとはいえ、今や一年の中でもひとつの大イベントだ。
そして、私はそんなイベントが大好きだ。
「はい、ムースポッキーだよ」
負けないくらい笑顔で鞄から菓子箱を取り出せば、なぜか神妙な顔をされてしまう。
あれ?ジロちゃんの好きなお菓子だよねコレ?
「だめだめ!それ後で貰うけどしまって!」
「は?え?なに、どゆこと?」
グイグイと腕を誘導され、ムースポッキーは再び私の鞄の中へと消えていく。
ジロちゃんは満足気に「これでよし!」と笑った。
「いーい?沙紀はお菓子持ってないんだからね!」
「は、はぁ……」
よくわからないが、可愛いのでとりあえず頷いておく。
「沙紀っ、トリックオアトリート!」
あれ??
「……えっと……お菓子、持ってないよー」
コレってつまり……
「やったぁ!」
満面笑顔のジロちゃんは、半ばタックルの勢いで私に抱きついた。
「ちょ、ま、まさかの悪戯フラグ?!」
「お菓子持ってないなら仕方ないC〜」
「いやいやいや、私持って……」
ちゅっ
私の頬に、ジロちゃんからの悪戯爆弾が投下された。
「……っ、な、じ、ジロ、ちゃ……っ?」
「あははっ!沙紀、かわE〜っ」
驚きのあまり動揺しまくる私に、まさかの最終宣告が降る。
「じゃ、いただきまーすっ」
ここ、学校の廊下なんだけど!!
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まさかの初ジロー
(11/10/12)
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