FOR YOU!!〜後編〜



「あの…跡部クン」

「何だ、黒河」



「…大変恐縮ですが、現状を説明してもらえますか?」



クリスマス当日。
私はなぜか跡部の迎えの車に乗せられていた。


朝っぱらから何なんだ。


学校まで歩かないで済むのはすごく喜ばしいのだけど。
如何せん、跡部の人気はハンパない。
車から降りるところをファンに見られでもしたら、明日の朝日を拝むコトが出来なくなる危険性がある。


「言ったろ?」


恐ろしい想像をしていた私に、ニヒルに微笑んで。
彼は確かめるように、一言一言、ハッキリと発音した。


「俺様自身が、お前へのクリスマスプレゼントになってやる、ってな」



「………え、っと…」


やっぱり、意味が解らない。
何で跡部が私にクリスマスプレゼントをする必要があるんだろう。


「ねぇ…跡部。私、別に貴方のファンじゃないんだけど」


ファンクラブ感謝イベント的なものなら、ちゃんとファンの子に還元しないと。

そう告げると、あからさまに眉を寄せられた。
そんな顔もイケメンだから迷惑な話だ。


「あ。でもテニスしてる時は応援してるよ。まじカッコイイもん、跡部のテニスプレイ姿」


「………っ」


少しだけ、驚いたような顔をされてしまう。

本音なんだけどな。今のは。


相手を弄ぶような華麗なテニスも、荒々しい攻撃的なテニスも。

跡部が一度コートに立ち、ラケットを振るえば、誰もが目を惹かれ……離せなくなる。


普段から色気があってカッコイイ彼だけど、テニスをしているときは、別格だと思う。

だからこそ。


「…なんで、私なの…?」


変な期待をしてしまいそうで。
自分を叱咤する。

跡部と私じゃ、不釣り合いすぎる。

こうやって、一対一で話しているコトすら、厚かましい気がして。自然と視線が、気持ちが、下へ下へと落ちていく。



「黒河」



それを遮ったのは、他でもない。
彼の声。

無意識に、顔を上げてしまう。
まるで惹き寄せられるみたいに。


「…理由が欲しいなら、いくらでもくれてやる」


自信と確信に満ちた、彼の瞳。

やっぱり、目が離せない。


「…俺様に誰が相応しいかは、俺自身が決める。だから、お前は躊躇わずに着いて来い」


言ってることは「どんだけだよ」って内容なのに、気がつけば頷いてる自分がいた。


きっと、たぶん。
彼の言葉に偽りがないことを知っていたから。


「クッ、良い返事じゃねぇの。…さぁ、クリスマスはまだ始まったばかりだぜ」



今年のクリスマスは、私にとって、一生忘れられないものとなりそうだ。









――――――――――
映画の試合シーンの跡部が華麗すぎる件。
(11/10/09改)




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