ホットココアに
マシュマロ一つ
甘い口付けのような、
そんな日々
騒がしく鎧の弾む音が鳴り響きます。
音は廊下を渡り階段を駆け上がり一際大きな装飾扉の前で止みました。
騒音の元を作っていた男は軽く咳払いをしてからノックをします。
「どうぞ」
柔らかい小鳥の鳴くような声に許され、男は扉を開け入りました。
部屋に足を踏み入れればふわっと香り。
そんな鼻をくすぐる匂いにも動じずにブリキの玩具のような格好をした兵士は大声で言いました。
「女王様!!お言葉ではありますが、些かよからぬ噂を小耳に挟み、」
「おはようスタイナー。朝早くからお勤めご苦労様」
にっこりと笑いかけ女王様と呼ばれた可憐な女性は手に持っていたマグカップをお皿に返します。
「あ、え、いや当然であります!自分はアレクサンドリア城及びアレクサンドリア国随一の兵士であることを心掛けて日々鍛練を惜しまず昼夜この国の平和を守る為動いて…」
「ありがとう。でもあまりベアトリクスを放っといちゃだめよ?」
「御意でありまする!愛する妻の為世の為そしてなにより女王様の為にこのスタイナー、努力を欠かさない事を誓うであります!!」
「素敵!じゃあ、頑張ってね」
「は!!では失礼致しました!」
最初から最後まで騒がしかったスタイナーはなにも気付かずに部屋を去ってしまいました。
軽く息をつき大きなベッドの仕切りカーテンに手を掛けます。
「もう良いわよ、ジタン」
そこはガーネット専用の寝床です。
誰もいるはずがないって?
いえいえ、ちゃっかり者は身を隠すのが上手いんです。
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