FF7小説 | ナノ


「ティファ?」


紡ぎかけた言の葉は、自分を呼ぶ声に遮られた。

振り向いた先に居たのは―――彼女ではない。
そこには愛しい、愛しい彼の姿が。

「…クラウド…?」
「ここにいたのか? どこに行ったのかと思って探してたんだぞ」

少し咎めるような口調。
見ればクラウドの体からは大量の水滴が落ちていた。
余程探し回ったのだろう。
ティファは彼に駆け寄り体の雫を持っていたハンカチで拭う。

「ごめんなさい、こんなになるまで探させちゃって…心配掛けたよね」

うなだれるティファを見下ろしてクラウドは首を横に振った。

「―――いや…そうだな、気持ちはわかる」
「え?」

言葉の意味を理解しかね顔を上げる。
そこには自分を見据える細められた翡翠の瞳。

「こんな雨の日は……此所に来たくなる、よな」


しとしと しとしと

雨の音は、幾月日が流れようとも変らない

あの頃の懐かしさは、今も胸に温かく残っていて。

思い出に負けるわけでもなく
過去を悔いるわけでもなく

ただ、蘇る あの頃の笑顔


「……うん…」

無意識にティファは彼に寄り掛かる。
そんな彼女の細い肩をそっと抱き、優しく艶やかな黒髪を撫でた。

「今度は…一緒に来ような」
「うん、ごめんね一人で来て」



目を覚ましたら
優しい雨が薫っていたから
貴女に会いたくなって
無性に恋しくなって

気がついたら此所に立っていた

時間が経つことも気にせず
ひたすら花の香りを楽しむように佇んでいるだけで

全てが洗われるよう。


ああ、貴女はやっぱりすごいんだな
みんなを癒して、みんなを包んで

大きな とても大きな存在だった



雨が降る

「…あ」

雫が垂れる

「どうしたの?」

水が溢れる

「…いや、今……」

泉が揺れる

「今?」

風が薫る

「微笑まれた…気がする……」

花が濡れる

「本当?」

光が漏れる

「ああ…ほら、そこ…」




ほら









微笑みが こぼれた







Fin

―――――――
優しい雨は降り続く


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