FF8小説 | ナノ

湿った熱気が体を蝕んでいた昼間とは異なり、涼やかな風が身を包む夕暮れ。
夏休みに入ったバラムガーデンの生徒たちは全員実家に帰省、SeeDたちは夏休みなどあるはずがなくほとんどが任務に出向いてガーデンの中は閑散としている。
が、それはいつもだったらの話だ。
今日はSeeDが外に出ることはない。
適当にガーデンの中で暇をつぶしながら皆ある放送を朝から心待ちにしているのである。
その放送とは…

―――ポーン

『間もなく、夏季バラムガーデン祭が始まります。ガーデン内にいるSeeD及び教官は至急校庭にお集まり下さい』

原始的なチャイムの後に無機質な機械音声が紡ぎ出した言葉。
その放送にガーデン中のSeeDたちが沸いた。

「よっしゃあああ!始まるぜ!ついにこの時が来たぜ!!」

張り切っていつもの服より数段動き辛い格好で暴れ回るゼル。

「落ち着けよ。着崩れて大変なことになるぞ」

同じ服装をしているスコールが注意を促し呆れたように腕を組む。

「いやぁしかしバラムガーデンは粋なことするね〜。SeeDだけの夏祭りなんてさ。ガルバディアガーデンでこんなに騒がしくしたら腕立てだよ」

さすがに今の格好に合わないと言ってトレードマークのテンガロンハットを被っていないアーヴァインは愉快そうに言う。

そう、今日はSeeDたちの夏一番のお楽しみであるガーデンの夏祭りの日。
会場はもちろんガーデン内である。
会場や店の準備はSeeDたちがセットしてその店の店員をやるのが教官たち。
つまり今日だけはSeeDが一人残らず楽しめる日なのだ。
毎年恒例のこの行事には、ある決まりがある。
それは…

『えー、皆さんこんばんは。学園長のシドです。いよいよガーデン祭ですね。今日一日は羽を伸ばして日頃の疲れを取って下さい』

校庭の壇上でシドがにこにことマイクを通じて話す。
その横にいるイデアも眼下のSeeDたちの顔を見て微笑みを浮かべていた。

『さて、毎年のことですがガーデン祭の決まりをほとんどの人が守っているようですね。結構なことです。やはり祭りと言えば浴衣ですからね、今着ていない人は後でちゃんと着て下さい』

そう、この祭りの決まりとはシドのもはや趣味である。
ガーデン祭に参加するSeeDたちは必ず浴衣を着用しなければならない。
いかなる理由でも浴衣を着ていなければその日ガーデンを歩くことは禁止されているのだ。

『これで始まりの挨拶は終わりです。では皆さん、終わりの合図が出るまで楽しんでください』

シドが話終わると同時に整列していたSeeD全員が敬礼をし、それから思い思いに行動し始めた。


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