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校庭を出た途端に周りはガーデンの中とは思えないほど賑やかだった。
天井に吊り下げられた提灯に屋台から漂う良い香り。
大きな音楽に合わせて踊る者もいればゲームに夢中になっている者もいた。
すっかりお祭り風景の辺りを見回しリノアは自然と満面の笑みになる。
「スコールスコール、どれから回る!?」
興奮気味にスコールを見上げ、言葉を待つ。
「どれでもリノアの好きなところから回れよ」
「スコールは行きたい場所ないの?」
リノアの言葉にスコールは少し考え、首を横に振る。
「……一つ、ある」
「え、どこどこ?」
「いや…そこには最後に行きたいんだ」
「そうなの?それまではわたしの行きたいところ、どこ行っても良いの?」
「ああ。リノアが決めてくれ」
「了解!じゃ、あそこ行こ!」
人の波を掻き分けリノアはスコールの手を離さないようにして目当ての店へ向かう。
スコールは本当に楽しそうな彼女の表情を見て頬を緩めた。
(本当はリノアの喜んだ顔を見れればそれだけで十分なんだけどな…)
そんな自分の胸の内を知らずにはしゃぐリノアを、心から愛しく思い繋いだ手にそっと力を込めた。
「!」
込められた力にリノアは後ろを振り向き頬を桃色に染める。
いつになく穏やかな表情のスコールに胸が高鳴り、負けじと自分も手に力を入れた。
そしてリノアが目指していた屋台にようやく辿り着いた。
その店の看板には【金魚すくい一回50ギル】と書かれている。
看板の横には小さな子供用プールいっぱいに溜められた水。
その中を泳ぐ赤と黒の金魚を前にスコールはリノアに問いかけた。
「これをやるのか?」
「うん!なんだか楽しそうだし、スコールもやってみよ?」
リノアの上目使いには逆らえずスコールは教官に二人分のギルを払ってすくい網をもらう。
「あ、お金…」
「構わない」
「でも…」
「いいから。今日は特別だ」
そうは言っても、これまで二人で出かけた時にリノアが払ったことは一度も無い。
全てスコールが先に払ってしまい、いつも「今日は良いから」と言われてしまう。
「いつも払わせちゃってるのに…」
「気にする事じゃない。好きでやってる事だ。それに、リノアは居るだけで良い」
さらっと言い退けられてしまっては、ただ頬が熱くなるだけ。
結局いつものようにリノアが折れ、
「…ありがとうね、大好き」
と柔らかい笑みと共に礼を言うしかなくなる。
(その顔と言葉だけでもう、十分だ)
一時の微々たる金にこだわるより、こうして彼女の心からの笑顔を見ることが何よりの幸せだから。
「そういえばリノアやったことあるのか?」
「ん?金魚すくいのこと?」
「ああ」
「ないよ」
すっぱりと答えるリノアにスコールは意外そうに片眉を上げ珍しく驚きを顔を露わにする。
「な、なに?そんなにおかしいかな?だってガルバディアにもティンバーにも金魚すくいなんてなかったんだもん」
「じゃあ、やり方は…」
「教えて?」
「……」
にっこりと悪びれなく言いのけたリノアにスコールは一から金魚すくいの細かなルールを約十分ほど教えこんだのであった。
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