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スコールはアーヴァインと一緒に校庭の木の下で互いの恋人を待つ。
「あれ〜?そういえば、ゼルとキスティスは?」
今更ながらアーヴァインがスコールに訪ねた。
アーヴァインが着ている茶系の浴衣が渋い印象にならず洒落た雰囲気を醸し出しているのは、やはり彼独特のオーラがそうさせているのだろうか。
そういう意味では浴衣が似合わない男だとスコールは内心密かに思いつつ質問に答える。
「キスティスは教官だからどこかの店番、ゼルは…あの三つ編みの図書委員と一緒だ」
「え!?三つ編みちゃんかい?だって一般の生徒は家に帰省してるはずじゃ…」
「ゼルがさっき強引に連れてきたんだよ。どうせみんな浴衣だから生徒一人くらい紛れてもばれないってな」
「ふうーん…ま、君の彼女もSeeD以外だしね」
そう言ってにやけ始めるアーヴァイン。
「今日のフィナーレはどこで見るんだい?スコールのことだから人目につくとこでは見ない…」
「なになに?フィナーレって!」
いやらしい目でスコールに詰め寄るアーヴァインの言葉を遮り橙色のカラフルな浴衣を着たセルフィが会話に入り込んできた。
「セ、セフィ!?いつのまに…」
「へっへ〜今さっき!」
スコールとアーヴァインにブイサインを送り、得意げに笑みを浮かべる。
「ねぇねぇなんの話してたの〜?」
興味津々に長身のアーヴァインを見上げて聞く。
「大した話じゃないよ。じゃあ行こうか」
「ふーん? んじゃ、はんちょまたね〜」
アーヴァインとセルフィは手を繋いで祭りに向かった。
そんな彼らの背を見送りつつスコールは深いため息を吐き木の幹に体を預ける。
(リノア、遅いな…)
待つのは慣れているが今日はやけに気分が落ち着かない。
理由は一つ。
早くリノアの浴衣姿が見たいからだ。
自分の単純さに呆れるも感情は正直で、早く彼女に会いたいと心の奥で願っていた。
途端
下駄の音をカラコロと響かせながら小走りでこちらに向かってくる人影が見えた。
どうやら願いはすぐに叶ったようだ。
「ごめんなさいスコール!!遅れちゃった!」
リノアはスコールの前に来てすぐに両手を合わせて頭を下げる。ところがなんの反応もないスコールを不思議に思い、リノアは顔を上げた。
すると、黒曜石のような瞳は大きく見開かれきらきらと輝きを宿す。
「うわぁ…スコール、すっごーい…かっこいい……」
リノアが視線を上げた先には紺碧の無地の浴衣を纏った美男子の姿。
元々綺麗な顔立ちの彼を見事に引き立たせている浴衣に思わず見とれてしまった。
「なんだかスコールじゃないみたい…いつもかっこいいけど、今日は十倍かっこいいよ!」
嬉しそうにはしゃぐリノアにスコールはようやく口を動かす。
「……それ…」
「え?」
「………その、浴衣…リノアのか?」
「あ、うん家出するとき荷物に入れてたの。なかなか着る機会なかったから今日着れて良かった〜」
スコールの蒼の双眼に映るリノア。
そこには、普段より美しさを露わにしている彼女の姿があった。
漆黒の艶やかな髪を後ろに一纏めにし、きらびやかだが上品な髪留めでとめている。
うっすらと化粧を施した顔は赤らんでいて、より一層可愛らしい印象を与えた。
極めつけがその浴衣。
全体が淡いパステル調に統一されていて水色の浴衣生地に桃色の帯。
手に持つ巾着も浴衣と同じ色と柄。
すっきりと爽やかで可愛らしい雰囲気のリノアの浴衣姿にスコールはどう反応して良いかわからなかった。
「スコール?どうしたのさっきから黙っちゃって」
「……いや、…」
一言でも褒めの言葉を口に出そうとするが上手く唇が動いてくれない。
こんな時口下手な自分を心から呪いたくなる。
するとリノアは、あぁ、と納得したように両手をパチンと叩いてくすくすと笑う。
「もしかして、褒めようとしてくれてるの?」
「……」
図星をつかれたスコールは情けない己の考えを見透かされたことに内心舌打ちをする。
(どうしようもないな……俺)
眉間の傷に皺を寄せ始めたスコールにリノアは慌てて両手を振る。
「いいの無理に言葉に出さなくたって!その内、自然に言えるようになったらで良いから」
ね?とスコールの両手を取って優しく言うリノアに「…すまない…」と謝った。
そんな彼を可愛く感じたのかリノアはくすくすと笑ってスコールの手を引いてやる。
「ほら、早くお祭り行こう?時間なくなっちゃう」
楽しそうに言う彼女にスコールはあぁ、と返事をしてリノアの前を歩いた。
もちろんこれからたくさんの人混みの中を行く。
繋いだ手はそのままに、スコールとリノアは校庭を出てガーデン祭会場へ向かった。
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