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数時間後、ようやく今夜の寝場所を決めたスコールはそこに皆を集めた。
「じゃあゼルとキスティスとセルフィは食事係、俺とリノアとアーヴァインはテント係だ、良いな」
有無を言わさない速やかな物言いに反論する者は無く、それぞれの作業に取りかかった。
スコールは荷物からテントを取り出しリノアとアーヴァインに端を持たせ広げる。
広げたあと端々についている紐を引っ張りその先をあらかじめ地面に打っておいた杭に通す。
スコールとアーヴァインは慣れた様子であっという間に通し終わったが、リノアだけがまだ戸惑うようなたどたどしい手つきで作業をしていた。
「代わる」
短く言いスコールはリノアから紐を取りすいすいと杭に通す。
「ありがとう」
スコールは掛けられた言葉に思わず振り向いた。
短く礼をした後リノアは食事係をしているセルフィ達の元へ駆け足で去っていく。
(…いつもなら…)
『スコールありがとう! すごいね!!』
とかなんとか言いながら飛び跳ねて大げさに反応するはずだ。
しかし、今日は―――
「な〜んか、リノア変じゃない?」
テンガロンハットをいじりながらアーヴァインが首を傾げる。
「…気のせいだろ」
どことなく苛ついた様子で言うとアーヴァインは、はは〜んと顔を嫌らしくにやけさせスコールを肘で小突く。
「なんだ〜い? もしかして珍しくリノアが相手にしてくれないから不貞腐れてんの〜?」
「は?」
『不貞腐れてる』というのもそうだが、『相手にしてくれない』という言葉が引っかかった。
「相手にしてないのは俺だろ?」
普段なら無視する言葉につい反論してしまう。
するとアーヴァインは人差し指をチ、チ、と左右に揺らす。
「わかってないな〜スコールは。 確かにスコールが相手にしてないのは事実だけど、その前にリノアが君の相手をしてるじゃない」
「……どういうことだ」
「だから〜、リノアが君に話しかけてあげてるんじゃないか。 普段はみんなスコールにそこまで話しかけないだろ? ところがさ、リノアだけはどんなに無視されようとめげずに相手してるってことさ〜」
自分が、リノアに相手にしてもらってる……?
いまいちアーヴァインの説明が理解できず、スコールは額に手を当て考え込む。
(…そもそもリノアはどうして俺に構ってくるんだ。 相手にしてもらおうなんて思ってないし、あいつだって俺に話しかけてもなんのメリットもないはずだ)
何故……?
スコールは答えのわからない問題を必死に解こうとした。
それを見かねたアーヴァインが肩に軽く手を置いてヒントを出す。
「こういうのは気持ちの問題だからね。 頭で考えても余計に混乱するだけだよ」
「…だったら、どうしろと?」
「簡単なことさ。 考えなきゃ良いんだよ」
「考えない?」
「そう。 まずは行動に移した方が早いって」
そう言ってアーヴァインはテントから離れ皆が料理をしている所へ行ってしまった。
(行動―――?)
スコールは視線を皆に向ける。
その中には楽しそうに笑顔を浮かべるリノアの姿。
あの笑顔がいつも自分に向けられていた。
皆の輪の中にいる方が楽しめるのに、輪から離れてる自分の方へわざわざ寄ってきては満面の笑みを見せて話しかけてくる。
なにがそんなにおもしろいのか、心から楽しそうにするリノア。
―――その彼女が、“もう相手にしてくれない”……
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